世界的なインフレを抑え込もうと米FRB(連邦準備制度理事会)をはじめ世界の主要な中央銀行が利上げなど金融引き締めに転じるなか、かたくなに金融緩和を続けてきた日本銀行が政策の修正に踏み切った。長期金利の許容変動幅をこれまでの0.25%程度から0.5%程度に拡大することから「事実上の利上げ」と見られ、市場も大きなサプライズに見舞われたが、この流れを受けて2023年前半の株式市場や為替市場はどうなっていくのか。グローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏が、日銀の金融政策を読み解く。
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日銀は2022年12月20日の金融政策決定会合で、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の運用の一部見直しを決定し、長期金利の許容変動幅を従来の上下0.25%程度から上下0.50%程度に拡大しました。これが市場では大きなサプライズと受け止められ、円は急騰、債券と株式相場はともに急落しています。
日本の長期金利が上昇することで、米ドルをはじめ他通貨との金利差が縮小し、円の魅力が増すので円買いが進み、円高となったほか、長期金利が上昇することで資金の借り入れが躊躇され、経済に悪影響を与える懸念から株式が売られました。また金利上昇によって既存の低利回りの債券は魅力が薄れるために債券が売られて債券価格が下がったわけです。
市場では、日銀が10年近く続けてきた異次元の金融緩和政策から脱却の第一歩として受け止められており、2023年の利上げの可能性も論じられているところです。
しかし、今回のイールドカーブ・コントロールの運用内容の修正措置がすぐに金融政策の正常化策につながるわけではありません。欧米のように政策金利を急激に0.75%も引き上げるような金融引き締めと同じようなものでもありません。
実際、日銀の黒田東彦総裁は「金融緩和を持続的かつ円滑に進めていくための対応であり、出口の一歩ということでは全くない」と述べており、大規模な金融緩和の継続姿勢を改めて強調しています。
日銀の発表文書を見ると、〈国債買入れ額を大幅に増額しつつ、長期金利の変動幅を、従来の「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に拡大する〉とあります。黒田総裁は運用内容の修正措置の理由を「市場機能の低下」として「金融緩和の効果がより円滑に波及するようにするための措置」と指摘しています。