異常な円安に相次ぐ値上げと、お金に振り回された2022年。年が明けても一度上がった物価が下がることはなく、私たちの暮らしは苦しいままだ。そうしたなかで年金に焦点を当てると2023年度、年金額はさらに目減りし、4月からは実質0.6%の減額となる。「年金博士」こと、ブレイン社会保険労務士法人代表の北村庄吾さんが言う。
「年金額自体は、68才未満は2.1%、68才以上は1.8%の増額の見通しです。しかし物価はそれ以上に上がっているため、実質的には減り続けているのです。現在の年金額は、現役時代の手取り収入の6割ほどですが、このままの水準が続けば、年金は減り続け、2040年代には現役時代の半分ほどの年金しか受け取れなくなる計算です」
年金は、受給開始年齢を遅らせれば遅らせるほど、受給額が増える。75才まで繰り下げれば、なんと184%に受給額が増える。
2023年4月からは新たに「5年前みなし繰り下げ制度」が始まる。受給を遅らせていた期間の年金を一括受給する際にも、増額が反映されるようになる。だが、北村さんは「繰り下げ受給はそもそも、自分の寿命を賭けたギャンブル」だと話す。
「75才まで受給を繰り下げたとしても、その前に亡くなったら1円も受け取れません。また、生きていても、認知症などになれば、せっかく増えた年金を自由に使えない。持病の有無や、自分が長生き家系なのか、いまの収入や貯蓄はどれくらいか……繰り下げは慎重に検討してほしい」(北村さん・以下同)
年金は、60才まで受給を早める「繰り上げ」も可能。早めるほど金額は減るが、繰り下げと同様、1か月単位で調整できる。会社員なら、国民年金と厚生年金、また夫婦ふたりで、繰り下げと繰り上げを組み合わせるのが賢明だ。
「一般的に、男性よりも女性の方が平均寿命が長いので、女性は繰り下げで損をすることは少ない。例えば“妻は遅らせて、夫は早める”といった方法を取るのもいいでしょう」