ギリギリまで申請しない人が増えた理由
たとえ家賃が払えなくなっても、スマホ料金だけは払えるようにしておきたい。支援団体に助けを求める連絡手段としてだけでなく、新たにアパートを借りるにも電話番号が必要だ。事実、通信料未払いでスマホが使えなくなり、コンビニの無料Wi-Fiを使って佐々木さんに相談してきた人もいたという。いまや、スマホやWi-Fiは“命綱”なのだ。
家を失って生活保護を申請する人が激増したのは、2020年の最初の緊急事態宣言のとき。飲食店やホテルのほか、ネットカフェも営業休止対象だったため、ネットカフェで暮らしていた生活困窮者が追い出されてしまったのだ。
ほかにも、ギリギリまで申請しない人が増えたのは「アルバイトアプリ」の功罪でもあるのではないかと、佐々木さんは言う。
アプリで日雇い・日払いの仕事を見つけられるようになったため、手持ちのお金が数百円になっても、その日の仕事が見つかりさえすれば、最低限の食べ物を買って寝泊まりすることはできる。
「イベント設営などのアルバイトの日給を手にネットカフェを転々として暮らしている人は少なくありません。短期のアルバイトとはいえ、合計すれば収入は月10万~12万円になる。それが最低生活費を超えると、生活保護の受給要件にギリギリあてはまらなくなります。
しかし、そうして暮らしている人がもし、何らかの理由で仕事を得られなくなったら、その日から食事も寝床も失ってしまう。いまはこうした“福祉と就労のギリギリのライン”に立たされている人も多いのです」
ギリギリまで頑張れてしまうからこそ逃げ場がなくなり、生活が立ち行かなくなってから申請や相談に踏み切る人がいるのが現状なのだ。
※女性セブン2023年2月2日号