トヨタ自動車とソニーグループ――日本を代表する企業のトップが4月1日に交代する。トヨタは13年間にわたり社長を務めた創業家出身の豊田章男氏(66)が代表権を持つ会長に就任し、技術畑出身の佐藤恒治氏(53)が社長に。ソニーは、吉田憲一郎会長兼社長(63)が代表権を持つ会長となり、十時裕樹副社長(58)が社長に昇格する。
カリスマ経営者の後継者選びでは、問題が噴出することも少なくない。『経済界』編集局長の関慎夫氏が言う。
「その一例が日本電産の創業者・永守重信氏(現・CEO)のケースです。元社長の関潤氏を日産自動車から三顧の礼で迎えたが、結局、退任させた。この10年間で、関氏を含めて4人の後継者候補が永守氏のお眼鏡にかなわず“退場”となりました。
日本電産は2023年3月期の純利益が従来予想から1千億円減となる大幅な下方修正を発表しましたが、これが後継者問題と無縁ではないとの報道もあります。永守氏はすでに78歳。後継者が定まらないまま永守氏に何かあった場合、日本電産の経営に大きな影響があるのではと懸念されます」
後継選びが難航するのは日本電産だけではない。
「柳井正氏のファーストリテイリングは、2002年に後継社長を指名したものの、3年後の2005年に柳井氏が会長兼社長に復帰。孫正義氏のソフトバンクグループも2015年にグーグルからニケシュ・アローラ氏を招き、後継指名したが2年ともたず翌年には退任している。
カリスマ経営者は自分を超えるか代わりになる人材を求めますが、それは基本的に不可能。どのような人を選んでも、結局、満足できないケースが多いのだと思います」(同前)
業績好調な大企業といえども、経営トップの交代が「運命の分岐点」になり得ることもある。
※週刊ポスト2023年2月24日号