適用となるがんの種類はまだ少ないが、今後の広がりが期待されている。
続いては薬価「3264万円」という破格の注射製剤キムリアだ。日本では2019年5月に難治性の白血病と悪性リンパ腫に対して承認され保険適用が始まった薬で、1回あたりの価格としては日本最高だった。キムリアによる治療はCAR-T細胞療法と呼ばれる。2017年に米国で実用化された新しい治療法で、がん細胞を攻撃する「T細胞」の働きに“アクセル”をかけ効果を発揮する。
「患者さんの血液からがんを攻撃する免疫細胞(T細胞)を取り出して遺伝子を改変し、がんへの攻撃力を強めたCAR-T細胞を作り、体内に戻す治療法です。これまで治療が難しかった種類のがんにも驚異的な効果を発揮するオーダーメイド薬です」(一石医師)
この治療法の誕生により、海外では複数の“寛解”例が報告されている。
「2022年2月に英科学誌『ネイチャー』に掲載された米ペンシルベニア大学の研究成果では、CAR-T細胞療法を受けた再発性・難治性白血病患者2人が10年経っても寛解を維持し、研究チームは『治癒』という言葉まで用いた」(同前)
今後は血液がんだけでなく、臓器などにできる固形がんへの応用が待たれている。
※週刊ポスト2023年3月3日号