極端な路線変更でコロナ再流行の懸念
日本政府は1月20日、新型コロナウイルス感染症の位置付けを2類相当から5類相当へと移行する方針を発表した。移行すると決めたのだから、できるだけ早く移行すべきだとする意見もあるが、そうした世論の中でも政府は5月8日からの移行を決定した。
通常、インフルエンザは冬から春先にかけて流行するケースが圧倒的に多い。この間も、2類相当の位置付けを維持し、感染防止のための行動をとることを義務付けたことは、インフルエンザの流行を抑える上では大きな効果があるという見方もある。
中国では、厳格な感染対策とそこからの完全自由化という、極端なコロナ対策の路線変更を実施した。そのため、集団免疫の効果が急激に弱まるであろう4月~6月にかけて、新型コロナウイルスの再流行も懸念されている。
また、米国をはじめ各国ではオミクロン株の派生型変異株であるXBB.1.5が流行しており、中国国内でも既にこの型が発見されているが、現段階で獲得されている可能性のある集団免疫がどの程度有効なのか不明である。このように、急激な感染対策の放棄は、様々な面でリスクも指摘されている。
そうした点を踏まえて考えれば、日本政府が5類移行の決定から実施までに一定の期間を設けたことは、良い判断であったのかもしれない。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。楽天証券で「招財進宝!巨大市場をつかめ!今月の中国株5選」を連載するほか、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。