突然やってくる病気やけが。蓄えがないと、医療費などに対する経済的な不安もあるだろうが、申請すれることで助けを得られる制度はたくさんある。備えあれば憂いなし。医療費の負担を少しでも軽くする公的制度と申請方法を紹介する。
手術や入院をした場合、必ず活用したいのが、医療費の負担を軽減する「高額療養費制度」だ。
高額療養費制度は、その月の1日から末日までの1か月分の支払いが、年収に応じたひと月の上限額を超えた場合、超過分が戻ってくる制度だ。加入している健康保険組合に申請すれば、3か月程度で還付される。たとえば、69才以下の年収500万円の人の医療費が100万円だった場合、自己負担額は8万7430円に。先に3割負担の30万円を窓口で払い、その後に申請すれば、21万2570円が還付される。
医療費の立て替えが難しければ、事前に「限度額適用認定証」を申請しよう。これを窓口で提示すれば、最初から自己負担額以上の医療費を払わずに済む。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんが言う。
「いまはマイナンバーカードに健康保険証をひもづけていれば、マイナンバーカードが限度額適用認定証の代わりになり便利です」
扶養に入っている人は適用区分に注意
さらに覚えておきたいのは、支払いを少なくする方法だ。
「治療は月をまたがず、同じ月にまとめましょう。たとえば、30日間の治療でも2~3月にかけて行うと、各月で申請しなければならず、自己負担額は約9万円ずつで合計約18万円に。しかし2月中に収めれば、自己負担額は約9万円で済みます」(黒田さん・以下同)
月をまたぎそうなら、治療のスケジュールを担当医に相談してみるのも手だ。
高額療養費制度は優秀な制度だが、注意点もある。世帯主の年収が高い場合、ひと月の医療費が16万7400円か25万2600円を超えないと適用されないのだ。そのため、会社員の夫の扶養に入っている妻などは注意が必要だ。医療費の額によって、適用されると思っていたのに、「えっ、適用されないの?」と驚くことがあるかもしれない。
「世帯主の年収が高い場合は、同じ世帯で、同じ健康保険に加入していれば医療費を合算して申請できる『世帯合算制度』もあるので、併せて活用しましょう」
適用区分のうち、自分の世帯がどこに当てはまるのか、確認しておくのがおすすめだ。