経済産業省が2022年の「キャッシュレス決済比率」を算出・発表した。クレジットカード、デビッドカード、電子マネー、QRコードなどの昨年の決済比率は36.0%、決済額は111兆円で、統計開始後初めて100兆円を超えたという。インバウンド需要への対応や生産性向上などを目的に同省が掲げる「キャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度にする」との目標はほぼ達成されつつある。
一方、現金による決済が減った分、「お金の使い方」について学ぶ子供たちの環境も様変わりしているようだ。なかには、娘に「お金の使い方」を学ばせようとして「思わぬ壁にぶつかった」という女性もいるようだ。フリーライターの吉田みく氏がリポートする。
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多くの店で導入されているキャッシュレス決済。現金を出す手間が省けるだけでなく、ポイント還元も広く享受できるようになった。日本でキャッシュレス化が進んだ背景には、この数年はコロナ禍の影響もあるかもしれない。
子供にお金の使い方を学ばせようとしたら…
神奈川県在住のパート主婦・リンさん(仮名、40歳)は、2020年に新型コロナウイルスが流行したことをきっかけに、キャッシュレス決済デビューをした一人である。
「今までは何も思うことなくお札や小銭を触って買い物をしていましたが、コロナ禍になって『接触』のリスクが言われ始めてから、不特定多数の人が触る現金は、衛生面で少し怖いと思うようになりました。
今では7歳の娘の小学校で備品を購入する時くらいしか現金を触る機会がないのですが、触った時は念入りに手指消毒をするようにしています」(リンさん、以下同)
キャッシュレス生活を意識し、できるだけお金を触らない生活を心がけていたリンさんだったが、娘に「お金の教育」を始めようとして、大きな壁にぶつかってしまう。
「娘にお金の大切さを学ばせようと思った時、それをキャッシュレスか現金で行うのかで悩みました。キャッシュレスだと『お金を使った感覚』が少ないのが気になり、まずは現金で学ばせようと思ったのですが、小銭を触った娘が急に『お金ってなんか汚い……』と拒絶したんです」