岸田政権が進める異次元の少子化対策の財源を巡る議論が注目を集めている。これまで政府内では税金ではなく社会保険料(年金・医療・介護保険料など)が活用される可能性が有力視されていたが、共同通信の最新の世論調査によれば、少子化対策の財源確保で社会保険料を増額することには「反対」が56.3%に上ったという(「賛成」は38.8%)。背景には、税負担だけでなく社会保険料の負担も年々増え続けているという現状がありそうだ。
岸田政権は3月31日に「異次元の少子化対策」の叩き台を公表。児童手当の支給対象の拡大や男性の育休取得率向上策などが盛り込まれたが、問題は総額8兆円ともされるその財源である。6月の「骨太の方針」で子ども・子育て予算を倍増させるうえでの大枠を示すものとみられるが、政府・与党幹部の発言などから“本命視”されるのが社会保険料から捻出するプランだ。
それに対して国民から反発の声があがるのは、「負担」が年々、重くなっているからだろう。財務省は国民所得のなかに占める税金や社会保険料の割合を示す指標である「国民負担率」の推移を公表しているが、それによれば1970年度時点での国民負担率は24.3%(租税負担率18.9%、社会保障負担率5.4%)。それが1979年度には30%を超え、2013年度には40%を超えることとなった。
2023年度の国民負担率の見通しは46.8%。約50年の間に国民負担率は2倍近くに増え、国民所得のおよそ半分を占めるようになったことから、ネット上では、江戸時代の年貢の「五公五民」になぞらえる批判の声まで出ているわけだ。社会保障負担率だけを見ると5.4%から18.7%へと、3倍以上になっている(別掲表参照)。
「給与明細から引かれる年金保険料や健康保険料の額を見ると腹が立って仕方がない。ここからさらに負担を増やすなんて“ふざけるな”という気持ち」(30代会社員)、「サラリーマンの場合、保険料は給料からの天引きだから、少しずつ負担を増やしても反発が少ないだろうと高をくくっているのではないか」(50代会社員)といった声があがるのも無理はないだろう。