イギリス発祥の競馬。日本でもファンは多く、毎週どこかでレースが行われている。日本中央競馬会(JRA)の優勝賞金は世界でもトップクラスだ。ジャパンカップ(11月開催)と有馬記念(12月開催)の1着賞金はなんと5億円(2023年から1億円アップ)である。頂点を目指し、最高のパフォーマンスを発揮するために、常にトレーニングに励む騎手たちだが、実力と運がなければ生活は厳しい。そんな騎手たちの収入事情はどうなっているのか。あらゆる仕事・業界の“マネー格差”について徹底調査した話題の新刊『マネー格差の天国と地獄』(ニューノーマル研究会・編)からリポートする。
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日本中央競馬会(以下JRA)の2022年のリーディング騎手は川田将雅で、総賞金は約31億円だった。まさに天国級の数字だ。ただ、この全てが騎手の手に入るわけではない。
「競馬の世界で一番偉いのはやっぱり馬主なんです。賞金の80%は馬主に渡されます。残りの20%のうち10%が馬が所属する厩舎に、5%が調教師、最後に残った5%が進上金として騎手の取り分となります」(公営競技に詳しいライター・新留若人氏)
前述の川田騎手で言うと、少なくとも約1億5800万円が彼の手に入ったことになる。こうなると気になるのが生涯獲得賞金だ。
「世界の競馬情報を集めるOLBG.comの調査によると、2021年時点で最も多額の賞金をゲットしたのは武豊の約876億円でした。武は国内だけでなく、世界のレースで活躍していることもあり、進上金は5%以上のこともありますが、最低でも43億4500万円を手にしたことになりますね」(同前)
さらに騎手の収入はこれだけではない。レースに出場し、騎乗しただけで騎乗手当と騎手奨励手当が支給される。レースのランクによって金額は変わってくるが、概ね4万~8万円だ。年間数百レースに出走する騎手も多くそれだけでも数千万円になる計算だ。
「OLBG.comの生涯賞金ランキングのトップ10中8人が日本人です。イギリスやフランスなど競馬が盛んな国は多いのですが、賞金額で言うとやっぱりJRA がダントツで高い。2022年度の賞金額2位のルメールも、フランス人なのですが、JRAの賞金を目当てに参戦している1人です」(同前)