2070年に日本の総人口は8700万人となり、うち1割は外国人になる――そんな人口推計が政府の外国人政策転換の直前に発表された。深刻な人口減少傾向を少しでも取り繕おうとするかのような「多民族国家」の未来図だが、その根拠はあまりに薄弱だとジャーナリストの河合雅司氏は指摘する。人口激減後の衝撃的な日本の姿を描いたベストセラー『未来の年表』シリーズの著者が、見通しが甘すぎる政府の人口減少対策を指弾する。
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少子高齢化に伴う働き手不足が顕著になってきたことを受け、政府が外国人政策を大転換させようとしている。
これまではスキルの乏しい人材の定住に慎重だったが、経済界の強い要望に応えるべくこれを180度改めようというのだ。
手始めに、母国で活躍する人材を育成するという趣旨と乖離している技能実習制度を「発展的に解消」させ、単純労働者も永住に道を開く長期就労を可能にする考えだ。
入国超過数の「根拠」はコロナ禍前の平均値
具体的には、熟練した技能を有する者に事実上の永住権と家族の帯同を認めている特定技能制度の在留資格「特定技能2号」の対象分野を拡大する。政府は6月9日、現在の2分野(建設と造船・舶用工業)に、宿泊業、農業、外食業、ビルクリーニング業、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、自動車整備業、航空業、漁業、飲食料品製造業の9分野を追加し、計11分野とすることを閣議決定した。