人生の節目にはなにかとお金が必要となる。子どもや孫のために自分の財産を“生前贈与”しようという人も多いだろう。しかし、そのルールを知らないと、たくさんの贈与税がかかってしまうこともある。だからこそ、賢い生前贈与のやり方を覚えておきたい。
子供や孫への生前贈与には、いくつかの非課税枠がある。代表的なものは、住宅取得資金の一括贈与1000万円までの非課税枠だ。だが、“落とし穴”はある。山梨県のNさん(62才)が話す。
「昨年、子供が生まれた息子夫婦に一戸建てを買ってあげました。さらにこれから何かとお金がかかるだろうと、贈与税を代わりに払ってあげたんです。すると、息子は税務署から“追加の贈与税”を支払うように言われ、結局損させてしまった」
円満相続税理士法人代表の橘慶太さんは「贈与税は必ず“贈与を受けた側”が、どんな理由があっても現金で払わなければならないもの」だと話す。
「よかれと思って贈与税を払ってあげたところで、そのお金もまた“贈与”なのです。もともと贈与していたものに対する贈与税にさらなる贈与税がかかり、結局子供や孫を苦しめることになる」(橘さん)
支払いが難しければ延納制度もあり、分割払いすることもできるが、現金払いしかできない。
子供が家を購入する前か後かで大違い
不動産を贈与するなら、あらかじめ贈与税を払えるだけの現金も併せて贈与しておくのも1つの手だ。税理士法人ベリーベストの税理士が解説する。
「住宅取得資金の一括贈与は、タイミングも重要です。子供が住宅ローンの契約をした後で返済のためにお金を贈与すると、住宅取得ではなくローン返済のために贈与したことになるので、非課税の特例の適用は受けられません。必ず、子供が家を購入する前に渡して、子供からハウスメーカーや不動産会社に支払いをする流れをつくるようにしましょう」(以下同)