株保有を報告した国会議員のうち、所得等報告書で「株による所得」を報告したのは3割未満──朝日新聞が7月4日付朝刊1面で報じた内容が話題だ。
記事では、自民党選対委員長の森山裕・衆院議員(78)が2022年は株の配当だけで「約4300万円」もの所得があったが、報告書にその記載がなかったと報じられている。
どんな銘柄をどれだけ持てば、そんな金額になるのか。資産等報告書を確認したところ、森山氏が保有する株はITコンサルの「フューチャー」と化学工業メーカー「ヤスハラケミカル」の2社のみ。そのうち、約116万株もの大量保有をするのがフューチャーだ。
同社株を保有した経緯を森山事務所に確認すると、森山氏自身が「同社の金丸恭文社長とは地元・鹿児島で同郷だった縁で、創業時(1989年)に応援する目的で210万円を出し42株を取得した」と説明した。同社は、2002年に東証一部上場を果たした後さらに成長。森山氏の現在の保有株数は同社の株式分割によって増えたもので、売買の結果ではないという。
森山氏が保有する約116万株は時価換算で約20億円。取得時と比べると、実に1000倍近くまで成長したことになる。
現行のルールではそうした保有株から得られる巨額の配当があっても報告書に記載する必要はないのだという。税理士の新名範久氏が言う。
「国会議員の所得等報告書は確定申告した所得を記載するルールのため、配当支払い時に源泉徴収されている場合は報告書への記載が必要ない、という話なのです。3%以上の大株主になると配当所得の確定申告が必要ですが、森山氏のフューチャー株の保有割合は1.3%程度なので源泉徴収で済みます。国会議員の資金を透明化するために、今後は配当なども記載するようなルールへの変更が必要と考えます」
本件について森山氏は「報告書に記載がないのはルールに従っているだけ。ルールが変われば記載します」と回答した。
ちなみにヤスハラケミカルは2000株保有し、約100万円の資産だ。
※週刊ポスト2023年7月21・28日号