9月11日、経団連が〈令和6年度税制改正に関する提言〉を公表した。そのなかで、岸田政権が進める「異次元の少子化対策」などの財源としての消費税について言及。消費税が〈社会保障財源としての重要性が高く、中長期的な視点からは、その引上げは有力な選択肢の1つである〉とした。これまで、岸田政権は財源確保のための増税は考えないとしてきたところに財界から再考を求められている格好だが、このまま増税論議に突入すれば、国民の反発は必至だ。
経団連の提言のなかでは、消費税について〈広く全世代の国民全体が負担すること、生涯所得に対して比例的で長期的には公平であること、財源として安定的であることなどの特徴〉があることから、社会保障財源としての重要性が高いと位置づけている。増税時期については〈経済情勢を踏まえて検討する必要がある〉などとしているが、経団連の十倉雅和会長はこれまでも会見やインタビューなどで、消費増税を議論すべきと主張してきたことから、このテーマへのこだわりが窺える。
たとえば、今年4月25日付の日本経済新聞でのインタビューで十倉氏は、少子化対策の財源に関して、「消費税も当然議論の対象になってくる」と発言した。さらに、過去を振り返ってみると、経団連がこれまでに何度も「消費増税に前向き」な姿勢を示してきたことがわかる。
2012年5月に発表された経団連の提言「成長戦略の実行と財政再建の断行を求める~現下の危機からの脱却を目指して~」では、財政再建などのための改革推進を訴えるなかで〈消費税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%へ引き上げ、その後、2017~2025年度の間、税率を毎年1%ずつ引き上げ、最終的に19%とする〉という前提での試算を公表している。「消費税19%」に達することが、経団連の求める“改革”という内容の提言だ。ちなみに同じ提言のなかでは〈法人実効税率を、2016~2025年度にかけて毎年1%ずつ引下げ、最終的には25%にする〉という「法人税減税」も書き込まれていることは見逃せない。
消費税は2019年10月から現行の税率10%に引き上げられたが、経団連はその直後の同年11月にも「経済成長・財政・社会保障の一体改革による安心の確保に向けて~経済構造改革に関する提言~」を公表している。そこでは〈将来の世代に全世代型社会保障制度を持続可能な形で引き継いでいくために、中期的な展望を持って、消費税率10%超への引き上げも有力な選択肢の一つとし、国民的な議論を喚起する必要がある〉と明記されている。こちらは税率こそ書かれていないものの、「増税直後にさらなる増税を議論しよう」と言っているわけだ。