いまや定年を超えても働く人はめずらしくない。60才を超えて資格を取り、「第二の人生」を謳歌している人の体験を通じて人生後半戦をより豊かに生きるヒントを探ってみた。
「おはようございます」「いってらっしゃい」──工事現場で誘導警備をしながら、永田逓児さん(91才)は通る人たちに必ず笑顔で挨拶する。
「一日を元気に楽しく過ごしてほしいと思うので、どんなかたでも3回は声をかけようと心がけています」(永田さん・以下同)
いつも朗らかな永田さんが快挙を果たしたのは、今年1月。91才にして交通誘導警備2級の検定に合格したのだ。
53才で航空自衛官を退官した永田さんは自動車メーカーの守衛や市役所の清掃関係の仕事を経て、67才で静岡県浜松市にある警備会社『ドリーム』に入社した。
「入社当時は社長夫妻と数名のスタッフだけでやっていた小さな会社で、すごく家庭的な雰囲気なんです。警備業はそれまで経験がなかったし1年で辞めるつもりで応募しましたが、居心地がよくて25年続いてしまいました(笑い)」
25年目にして資格取得に踏み切ったきっかけは昨年5月、会社で受けた講習だった。県の公安委員会が指定する国道や県道の警備には有資格者を配備する義務があり、取得希望者は会社が支援するというもの。
「実際に資格がないから行けなかった現場もあったので、よし、やってみよう!と挑戦しました。でも、大変でしたね。読むことには慣れていますが、覚えが悪い(苦笑)。昨日覚えた言葉が今日には思い出せなくなっているので、ノートに繰り返し書いて覚えました。朝4時半に起き、2時間ほど勉強してから出勤する日々でした」
実技の練習では、妻が腕の上がり方などを細かくチェックしてくれた。