「ぼくが死んだらあとはよろしくね。やり方はわかっているでしょ」。流通ジャーナリストとしてテレビでもおなじみだった金子哲雄さん(享年41)は妻の稚子(わかこ)さんにそんな言葉を残し、2012年10月に旅立った。
生前、希少ながん「肺カルチノイド」と診断された金子さんは直ちに終活をスタートさせた。病床でせき込みながら葬儀社と打ち合わせを進め、葬儀の進行や棺、会葬礼状などを指示し、自らの葬儀をセルフプロデュースした。
金子さんの遺志を継いで終活ジャーナリストとして活躍する稚子さんは「夫はあらゆる意味で隙がない人でした」と語る。
「死後の手続きは書類を整えて提出するのが本当に大変ですが、生前の夫の計らいで『金子くんから頼まれているから』『こうすればいいよ』と手伝ってくれる人が次々に現れました。故人を失ったばかりの状態で、悲しみに暮れる心を引きずりながら銀行や役所に出向き、複雑で手間のかかる作業をひとりで行うのは心身ともにかなりの負担です。
そんなときにたくさんの人が手を貸してくださったのは、本当にありがたかった。あのときは夫の気遣いの深さに涙が出ました」
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