訪問介護の現場では、訪問先が「ゴミ屋敷」でサービスを行う上で支障をきたすケースがあるという。こういった場合、「ゴミの片付け」の分を業務として賃金を請求できるのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
訪問介護員です。ヘトヘトなのは、介護先の家がゴミ屋敷状態だということ。高齢者なので、ゴミが散乱するのは仕方がないとしても、片付けないと介護の仕事が始まらず、なにより辛いのは、ゴミ処理に費やす時間や労力が賃金に反映されていないことです。この場合、どこに待遇改善を求めればよいですか。
【回答】
訪問介護員の業務は利用者宅を訪問し、介護サービスに従事することですが、そのサービスには身体介護と、生活援助があります。
前者は入浴介助、排せつ介助、食事介助など利用者の身体に直接接触して行なわれるサービス等です。後者は調理、洗濯、掃除等の身体介護以外で利用者が日常生活を営むことを支援するサービスで、この他、利用者の通院の介護を行なう通院等乗降介護もあります。
あなたは事業者と雇用契約を締結した際に、労働条件明示書をもって、従事すべき業務の内容を示されていると思います。業務が身体介護に限定されていれば、利用者の体に直接接触して行なう介護のみをすればよく、ゴミの処理は業務内容ではありませんから、しなくてもよいのです。
訴えのように、ゴミの片付けをしないと身体介護が物理的に不可能である場合には、事業者に生活援助をする訪問介護員との共同訪問を要請すればよいかと思います。