中国では、銀行をはじめ、石油、石炭、電力といったエネルギーや鉄鋼、非鉄金属、化学といった素材など、大資本を必要とする産業では中央系国有企業が支配的な地位を占めている。重工長大産業が多く、成熟した産業ばかりといった印象を受けるかもしれないが、スマートグリッド、水素エネルギー、原子力エネルギーとか、半導体、AIといった戦略的新興産業への参入も少なくない。2023年末現在、本土市場に上場する中央系国有企業は383社あり、この内154社が戦略的新興産業に属している(国有資産監督管理委員会データより)。
もし中国経済を回復させたいのであれば、国有企業の業績を回復させればよい。先週、本土、香港の株式市場が急反発を見せたが、その要因の一つとして、この中央系国有企業に対する政策が挙げられよう。
国務院新聞弁公室は1月24日、「中央系国有企業に関して、中核となる機能を集中的に強化し、その競争力を引き上げ、さらにしっかりと質の高い発展を実現させる」ことをテーマに記者会見を行った。主管部門である国資委幹部によるブリーフィングに続き、記者たちの質問に答える形でその詳細が示されている。
大雑把に言えば、「国家の主要戦略に重点を置き、資源配分の最適化を図ることで、既存産業の再生、戦略的新興産業の発展を図る」といったセミマクロ戦略と、「個別の国有企業の経営を強化する」といったミクロ戦略が語られたのだが、市場関係者が注目したのは後者であり、特に経営陣に対する人事評価基準を強化した点に注目が集まった。
企業業績に関する経営陣の人事評価としては、従来から利益、純資産利益率、全従業員の労働生産性、研究開発投資の強度、営業キャッシュフロー比率、資産負債比率といった“一利五率”による目標管理システムが採用されているが、国資委産権管理局の謝小兵副局長はさらに 今後は“市場価値”を管理目標に加えることを検討すると明言した。
企業が発展するためにはまず資金が必要だ。そのために資本(プライマリー)市場を最大限に利用しようということが根本的な狙いである。しかし、投資家から十分な資金を調達するためには、よく整備され、洗練された流通(セカンダリー)市場の存在が不可欠だ。
今後、“一利五率”をこれまで以上に重視することに加え、自社株買いを通じた株価対策、配当性向の引き上げやタイムリーな業績見通しの発表など、投資家への利益還元が人事評価の項目として新たに加わることで、本土流通市場の質が大きく改善されるかもしれない。