相続において、特に問題が起きやすいのが、親が不動産を保有しているケースだ。専門家からは「不動産は“相続の問題児”と呼ぶべき存在」との声まであるほどで、遺産に土地や建物が含まれていると、手続きが面倒になったり、関係者の話し合いや利害調整に時間がかかってしまったりする。
親の死後に待つ相続の手続きの多くには“タイムリミット”があり、期限を過ぎると追徴税や延滞税、場合によっては過料などが科される。親が存命で時間的余裕のあるうちにどれだけ備えを重ねられるかが重要となる。
具体的に何をすればいいか、Q&A方式で見ていこう。
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相続税の納付手続きは原則、死後10か月以内だが、親の「不動産」をめぐるトラブルは多く、期限内に手続きを終えられなくなるリスクが生じる。
それゆえ、「死後10か月」という期限に縛られないように、親が亡くなる前から先回りして対策しておく発想が肝要になる。
Q:まず何から始める?
最初に行なうべきは、「相続人」の確認だ。
「結婚している人は配偶者が必ず法定相続人になり、加えて子がいれば子、子が先に亡くなっていれば孫へと代襲相続が発生する。子がいなければ親が、親が亡くなっていれば兄弟姉妹が、といった具合に変わっていきます。相続対策の大前提の部分だが、意外と勘違いしている人が多い」(吉澤相続事務所代表の吉澤諭氏。以下「」内、同)
この確認をすることで、話し合いなどをするメンバーが固まってくる。
Q:不動産を所有している場合の注意点は?
早い段階で不動産登記の確認を行なうことだ。
「たとえば父親名義と思っていた不動産が祖父名義だった場合、祖父の相続人をすべて特定して遺産分割を話し合わなくてはならないなど、膨大な手間がかかる。父親が亡くなってから事態を把握しても手続きはスムーズに進まないので、存命中に名義変更をすべきです。
他にも建物が未登記など、不動産は様々なトラブルを生む可能性がある。事前に確認して、固定資産税の明細や権利関係の書類を一か所に集めておくとよい」