新学期が始まり、大学でも前期の授業が始まっている。この時期、大学関係者のあいだで議題に上がるのが、「不本意入学」の学生たちの心のケアだという。
不本意入学とは、志望校に合格できず、第二、第三志望の大学や、すべり止めにしていた大学などに“不本意ながら”通う学生のこと。そうした意識を持つ学生は、大学に馴染めずに不登校になったり、入学金を払ったものの、ほとんど授業に出席しないまま退学したりするケースもある。
不本意入学した学生が、入学した大学で充実した4年間を過ごすためにはどうしたら良いのだろうか。過去に「不本意入学だった」という卒業生たちに、大学生活を楽しめるようになった秘訣を聞いた。
「このままだと俺の青春が終わる」
今年の春まで、都内のいわゆるFラン大学と呼ばれる私立大学に通い、大手のインフラ系企業に就職した男性Aさん(20代)は、こう話す。
「僕の第一志望の大学はMARCHのなかの、ある大学でした。ただ、入試の時期に体調を崩し、第一志望から第四志望まですべて失敗してしまったんです。正直、第一志望も予備校の模試ではA判定が出ていたし、高校では比較的勉強もできる方だったので、まさか全部落ちるとは思っていませんでした。結果的に、合格したFラン大学に行くことになったんです。正直、その大学のことはまったく調べたこともなくて、通うことになるなんて思ってもいなかったですね(笑)」(Aさん)
家の金銭的な都合と、本人の気力の問題もあり、浪人せずに「不本意入学」することを決めたAさん。
「入学してすぐにコロナ禍です(笑)。不本意入学で、そのうえコロナ禍という最悪な学生生活のスタートでした。正直、オンライン授業を受けるのもいやだし、Zoomを使った顔出しのグループワークや英語の授業でも、『なんで俺がこいつらと一緒に勉強しないといけないんだ?』と、他の学生を見下していた面がありました。
ただ、あるとき『このままだと俺の大学生活は終わる。青春がなくなる』と思い、自分の通う大学の良さを探そうと、大学が配布している学校案内の分厚いパンフレットを読み込んだり、学生相談室の人と面談したりしたんです。
すると、海外留学プログラムが充実していることがわかりました。親に相談して、東南アジアの国に2回ほど語学留学することを決意しました。現地では別の学部の友人もでき、友人たちが非常に優秀で、考え方も深いことを知った。僕が勝手に見下していたんだと反省して、そこから英語も真剣に学び、友人の輪も広げていきました。大事なことは、まずプライドを捨てるということです」(同前)