民間組織「人口戦略会議」が4月24日に発表した〈令和6年・地方自治体「持続可能性」分析レポート〉が波紋を広げている。「消滅可能性自治体」と名指しされた市町村関係者のあいだには落胆とも諦めともつかない雰囲気が広がる一方、「これまでの地域の努力や取り組みに水を差す」といった批判の声も上がっている。果たして、打開策はあるのか? ベストセラー『未来の年表』シリーズの著者・河合雅司氏が解説する。【前後編の後編。前編を読む】
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そもそも、「人口戦略会議」が試みたような、20~39歳の女性人口の増減見通しだけで「消滅可能性」に言及する手法は問題がある。
例えば、この年齢の女性数が100人に満たないような小規模自治体は年代にかかわらず社会移動が少なく、人口戦略会議の分類では「消滅可能性自治体」に該当しない。また、20~39歳の女性人口の変化こそ小さくとも、住民の大半が高齢者という自治体も対象とはならない。
だが、実際にはこうした小規模自治体はマーケットの縮小スピードが速く、生活必需品を扱う小売店の撤退が始まっている。医療機関や学校といったサービスの維持も困難である。水道料金などの値上がりも進み、生活コストは嵩んで行く。一方、住民の高齢化が進行するので地方税収は減少し、行政サービスは届きづらくなる。
要するに、20~39歳の女性人口の減るスピードにかかわらず、年々住みづらくなっているということだ。やがて限界点を超えることになると、人々は住み続けられなくなる。自治体が「消滅の危機」に陥るかどうかは20~39歳の女性人口の見通しだけでは決まらない。
「絶対的な評価基準」とはなっていない今回の分析結果に振り回される必要はないが、人口戦略会議のレポートが全く無意味だと言うつもりはない。個別の自治体の予測については説得力を欠くところがあるはいえ、大きな方向性としては間違ってはいないからだ。