トラックドライバーの残業規制などを含む働き方改革関連法が施行されて1か月が経った。この間、輸送力低下などで生じる恐れのある諸問題が「物流の2024年問題」として取り沙汰されてきたが、今、トラック輸送の現場ではどんな事態が起きているのか。フリーライターの清水典之氏が物流・運送業界の動向に詳しい識者に聞いた。
* * *
「宅配便がすぐに届かなくなる」──働き方改革関連法により2024年4月から運送ドライバーの時間外労働時間に上限が設けられることで懸念される「物流の2024年問題」について、メディアではそうした文言が繰り返されてきた。しかし、規制開始から1か月が経過したが、今のところ宅配で大きな混乱が起きているようには見えない。
大型トラックのドライバーで、物流に関わる執筆や講演を行なっているフリーライターの橋本愛喜さんは、「物流2024年問題とは宅配の問題ではない」と強調する。
「労働時間を短縮しながら物流を止めないようにするには、ドライバーの数を増やすしかありませんが、宅配は大手の社員ドライバーだけでなく、下請けの中小零細企業や個人事業主も担っています。宅配ドライバーは普通免許ででき、以前は軽の貨物車が必要でしたが、緩和されて一般車両でも可能となり、人手を増やすのは比較的簡単。地場配送が主なので長時間労働にもなりにくい」(橋下さん、以下同)
自家用車でも手軽に個人で始めることができるため、アルバイト感覚で手がける人も多いという。
「一方、企業間輸送を担う中長距離ドライバーになるには中型・大型免許が必須。貨物自動車運送事業法により、仕事を受けられるのはトラック5台以上、ドライバー5人以上を有する法人に制限されるので、増やすのは容易ではありません。つまり、物流2024年問題とは、宅配ではなく企業間輸送の問題なのです」
実は物流のなかで、宅配の占める割合は意外に小さい。令和4年度分の「自動車輸送統計年報」(国土交通省)を見ると、営業トラックの輸送総量約25.6億トンの内、宅配を含む「取り合せ品」は1.8億トンで、わずか7%。企業間物流の方がはるかに規模が大きい。