社長たちはどこに住んでいる?(写真:イメージマート)
「社長」はどこに住んでいるのか──その情報を知ることが、今後は難しくなりそうだ。法務省は今年10月から登記簿で公開される代表取締役の住所について、希望があった場合、非公開にする方針を固めた。「プライバシーが必要」という経営者側からの強い要望を考慮したという。今後は住所の市区町村から先を省略できるようになる。結果、東京商工リサーチが発表してきた「社長の住む街ランキング」も、2023年のものが「最後」になる。その最新版ランキングでは、社長たちはどこに住んでいるのか。ランキングは町村別、市区郡別でそれぞれ集計されており、本記事ではそれぞれのトップ100(計200)を紹介しよう。
町村別の1位は「東京都 港区赤坂」で4099人。前回の調査が行なわれた2021年に続いてトップとなった。続く2位には「東京都 新宿区西新宿」で3395人、3位には「東京都 港区六本木」の3241人。この結果について、東京商工リサーチ情報本部情報部課長の坂田芳博氏はこう話す。
「1位の赤坂は、都市型の商業施設や繁華街がある一方、高級マンションが建ち並び、閑静な住宅街が広がるエリアもあります。米国大使館など各国大使館も点在しているため、大使館員や外資系企業の社員も多く住んでいる町といえるでしょう。続く2位の西新宿は、世界一の乗降客数を誇るJR新宿駅西側に位置し、都庁など高層ビル群が副都心を形成している土地。近年はタワーマンションの建設も積極的に進められ、富裕層からの人気を集めています。3位は、1位の赤坂に隣接する六本木。ひと昔前に流行した“ヒルズ族”で知られる六本木ヒルズが街のランドマークとして、いまも存在感を放っています」
6位以下に目をやると、港区や江東区など「ベイエリア」の追い上げが顕著だという。
「6位の港区芝浦は、前回8位からの浮上。かつては工場や倉庫が建ち並び、バブル期はディスコが若者を集めるウォーターフロントでした。今は再開発の影響で大きく変貌を遂げ、東京湾の夜景を望むタワーマンションやオフィスビルの供給が進んでいます」(坂田氏)
町村別「社長の住む町」ランキングトップ100
【市区群別】2023年 社長の住む町ランキング 1位~25位
【市区群別】2023年 社長の住む町ランキング 26位~50位
【市区群別】2023年 社長の住む町ランキング 51位~75位
【市区群別】2023年 社長の住む町ランキング 76位~100位
港区は「人口に占める社長比率」が圧倒的に高い
市区郡別に見るとトップ10は東京23区が独占している。1位は「東京都 世田谷区」で5万4262人と唯一5万人を超えた。2位は「東京都 港区」で3万9516人、3位は「東京都 渋谷区」で2万9090人という結果に。
「1位の世田谷区は、そもそも23区で人口、世帯数ともに最多で91万人を超える人が住んでいます。閑静な住宅地を抱えることで知られ、高級住宅街の『成城』『奥沢』『深沢』の3エリアが町村別のデータの22位から24位にランクインしています。2位の港区は、人口に占める社長比率が都内で圧倒的に高く、まさに“社長だらけのエリア”といえるでしょう。高級マンションの供給も続いており、町村別のデータをみてもトップ10に港区の6エリアがランクインしています。
3位の渋谷区は、前回5位からの急浮上。いわずもがな知名度の高い土地で国内外の観光客を集める一方、落ち着いた住宅地も併せ持っていることから、社長からも人気を集めていると考えられます」(坂田氏)
市区郡別「社長の住む町」ランキングトップ100
【町村別】2023年 社長の住む町ランキング 1位~25位
【町村別】2023年 社長の住む町ランキング 26位~50位
【町村別】2023年 社長の住む町ランキング 51位~75位
【町村別】2023年 社長の住む町ランキング 76位~100位
アフターコロナで「職住近接」志向が高まる
社長が選ぶ立地として、閑静な高級住宅街というだけでなく、近年は仕事における利便性の高さを重視する傾向もあるという。
「職場や取引先が集まる都心部に住む『職住近接』志向が、近年非常に高まっていると考えられます。コロナ禍で急速にリモートワークが広がりましたが、アフターコロナの局面を迎え、職場勤務に再びシフトし始めています。通勤時間と住環境へのこだわりは各自で異なり、都心を離れた静かな住環境を優先する社長層と、職住近接を志向する層に二分されていますが、若い社長を中心に都心部への集中がさらに進むことになるでしょう」(坂田氏)
今後は「非公開化」が進んでいくと考えられる「社長の住む町」。近年は地価の上昇でマンション価格が高騰しているが、“成功者”たちはこれからどんな町を選ぶのだろうか。