繁忙期のリゾート地や観光地に一定期間住み込んで働く「リゾートバイト」。近年では、40~60代のミドル・シニア世代でも採用されるケースが増えてきたという。仕事に対する考え方が多様化する中で、シニアのリゾートバイトにはどんなメリット・デメリットがあるのか、経験者のリアルケースから探ってみよう──。
渡邊佳子さん(62才)は愛知県在住。20代は自衛官として勤務し、退職後に結婚。4人の子供たちを育て、その間コンビニエンスストアなどでパートとして働く。子供たちが独立し、夫婦ふたり暮らしとなったタイミングで66才の夫を自宅に残し、ひとりでリゾートバイトを始める。
「自分が還暦を迎えたとき、これまで悔いのない生き方をしてきたか振り返ってみたんです。そうしたら、ちょっと物足りないぞ、って(笑い)。子供たちも独立しましたし、これからは自分のために自由に生きたいと思いました。それを実現するために、まず家を出て自立しようと考えたんです」(佳子さん・以下同)
夫は典型的な“昭和の男”。無口で、夫婦の会話があまりなかったことも佳子さんが自立を考えた理由のひとつ。離婚とまではいかずとも、お互いが元気なうちにひとり暮らしの夢を叶えたかったという。
とはいえ、結婚後は短時間のパートくらいしかしたことがなく、60才を過ぎての職探しは厳しかった。お金をかけずにひとり暮らしをする方法はないか……。インターネット検索を繰り返し、辿り着いたのが、リゾートバイトの求人募集だった。
「これだ!と思いました。だって、食事付きで寮費も光熱費も無料。温泉にまで入れると書かれていて……。すぐに応募しました」