米大統領選挙でのドナルド・トランプ氏の勝利で大いに沸いている投資先が「暗号資産(仮想通貨)」だ。代表格のビットコインは連日のように最高値を更新し、11月10日に初の8万ドルに達し、13日には一時9万ドルを突破。「今年中に10万ドルを突破する」といった予測まで広がっている。その背景について暗号資産に詳しい金融文筆家の田代昌之氏が解説する。
「7月下旬に『米国をビットコインの超大国にする』などと発言したトランプ氏が再選して期待が高まったことが大きい。トランプ氏はビットコインを金(ゴールド)と同じように『戦略備蓄にする』ともぶち上げており、実現すれば米政府がビットコインの信用を認めたことになり、これも大きな追い風になると期待されたわけです」
米国のビットコイン保有者は推計2000万人ともいわれる。暗号資産の規制強化を進める民主党に対抗してトランプ氏が規制緩和を唱えたのは、大票田を取り込む狙いもあったと田代氏は見る。
「これまでは期待感で買われてきたが、ここから先はいかにして具体的な政策に盛り込んで実現させるかが重要になる」
とはいえ、この沸騰ぶりを見ても、暗号資産に触手を伸ばせないという人も多いのではないか。
なにしろ、「1日で5~10%の値動きが続いてもおかしくない“最上級のハイリスク・ハイリターン商品”。株より値動きが激しい。何よりその存在があやふやというイメージが一般的に根強い」(同前)ため、初心者はなかなか手を出しにくい。
「雑所得」扱いで最高税率55%の累進課税に注意
そもそも暗号資産は中央集権的な発行体が存在せず、仮想空間上でデータが取引されるだけ。実物はない。暗号資産交換所に口座を開設してスマホのアプリなどで売買するものだ。
儲かったとしても、その利益は株の売却益(約20%課税)と異なり、「雑所得」扱いで最高税率55%の累進課税となる。新NISAの非課税とは大きく異なる。
「最大のリスクは、ネットワーク上のデータであるため、ハッキングされて資産を失う可能性があること。実際、2018年には交換所大手のコインチェックから約580億円相当が、今年5月にもDMMビットコインから約482億円相当の暗号資産が不正流出した。いくらセキュリティを高めても“イタチごっこ”で、ハッキングリスクはゼロにはならないのが実状です」(同前)
ただ、大きなリスクを負ってでも大儲けしている人がいるのも事実だ。リスクを承知で始めたい場合、どうすればいいか。
「ハッキングリスクがゼロにならない以上、財産全額を投じるなどもってのほか。投資金額を資産全体の5%程度にするなど、万が一失っても痛くない金額の範囲内にするのがいい」(同前)
慎重に慎重を重ねた判断を要することは、言うまでもない。
※週刊ポスト2024年11月29日号