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中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「帰国しないでもう少し寿司屋のバイトを続けます」語学留学でオーストラリアに行った女性の選択が象徴する“日本の国力低下”と“若者の海外流出”加速の懸念

日本に帰国するより少しでも長く海外でバイトしたいと考える若者も(写真:イメージマート)

日本に帰国するより少しでも長く海外でバイトしたいと考える若者も(写真:イメージマート)

 物価高が止まらないなか、賃金上昇がそこに追いつかず、日々の生活で苦しんでいる人が増えている。かつてリーマン・ショックによる不況が到来した2008年の年末には「年越し派遣村」が設置され大きな注目を集めたが、2024年末にも生活困窮者向けに無料の食料配布が行われた。そうしたニュースを目にしたネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、「今の状況はかつてより悪化しているのでは?」と懸念する。そして「このままでは若者の海外流出が加速するのではないか」と懸念する。中川氏が、今の日本経済が置かれた状況についてリポートする。

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 12月31日、NPO法人TENOHASIが、東池袋中央公園で、アジフライ弁当を無償で提供したところ、355人が並んだとのこと。その様子を報じた朝日新聞記事によると、食料配布の列に並んだ72才男性は月7万円ほどの生活保護で暮らしており、物価高の影響でこれまでの3分の2程度しかスーパーで食料品を買えなくなったと言います。

 リーマン・ショックがあった2008年には、生活困窮者が過ごせる避難所として「年越し派遣村」が設置されて話題になりましたが、その後の物価の推移を見ると、より状況は悪化しているのではないでしょうか。

 公益財団法人日本生産本部によると、2008年は1人あたり名目GDPは3万5279ドルでOECD加盟国中18位(2023年は3万3849ドルは22位)。それでいて、総務省『消費者物価指数』によると、2020年の基準を「100」とした場合、2023年は「105.6」。2008年は「96.8」で、約10%安かったのです。しかも、2008年は前年比+1.3ポイントでこの時ですら「物価高」と表現されたのに、2021年から2022年は+2,5ポイント、2023年から2024年は+2.3ポイント。

 政府は「2%の物価高を目指す」と言っていたので、それが見事に達成されました。さすが我が国政府の政策実行力は大したもんだ! なんて喜べるワケがない。これはあくまでも賃金が2%以上上がることが前提となっていたのに、そうはなっていない。ただただ生活が苦しくなっただけです。

GDPが他国に抜かれるたびにアクロバティックな日本擁護

 事実、私もこの2年間で同じものをスーパーで買ったとき、3100円だったものが3500~3600円程度に上がっていると実感できます。居酒屋でも、一皿399円だったポテトフライが499円に上がっています。ラーメンは650円だったものが780円といった具合で、総額を抑えるためには、品数を減らすしかありません。

 このままでは日本人の購買力がタイやベトナムに抜かれる日も遠くなさそうですが、当の日本人は今でも我が国は経済大国である、と信じ続けている節があります。テレビでは“外国人が日本のクオリティを絶賛!”的なニュースの特集も多いですが、それはあくまでもそのハイクオリティの割に安過ぎるというだけです。

 ネットでは、日本経済に対する悲観的な意見があると「物価は確かに上がっているが、コスパの面では日本は世界有数」「こんなに清潔でインフラが整った国はない」と的外れな反論が来る。挙句の果てには「そんなに日本がイヤならば出て行け!」と、謎の追放宣告を食らう始末。

 GDPにしても中国に抜かれ世界3位になった時は「あちらは人口が12倍だから当然」で、ドイツに抜かれ4位になった時は「ドイツは物価が日本と比較にならないほど高い」と来る。これから順位が落ちてくる度にアクロバティックな日本擁護をするのでしょう。現在は韓国に対する自尊心の保ち方として、「最近の韓国人メジャーリーガーよりも日本人メジャーリーガーの方が圧倒的な実績を残している」というものがあります。それは日本人がすごいのではなく、個々の選手がすごいだけです。

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