“ミスター消費税”こと新川浩嗣・事務次官(時事通信フォト)
物価高は続き、国民の家計は逼迫しているにもかかわらず、石破政権は“103万円の壁”引き上げをはじめとする減税策に後ろ向きだ。協力をアテにしていた国民民主党との協議は事実上決裂状態となった石破政権は、立憲民主党との大連携に向かいつつあるというのだ。その背景で動いているのが、新川浩嗣・事務次官率いる財務省だ。生活苦に直面する国民の声を聞くどころか、永田町を「増税大連立」へと動かそうとしているのだ──。【前後編の後編】
千載一遇のチャンス
政治の舞台には増税に向けた役者が揃っている。
石破茂・首相は民主党政権時代、野党だった自民党の政調会長として消費税を10%に引き上げて医療・介護・子育て・年金の財源にあてるという財政健全化責任法案を提出して民主党に増税を迫ったその人だ。立憲民主党の野田佳彦代表はそうした自民党案を丸飲みする形で首相として社会保障と税の一体改革にまとめ、自公と組んで消費税10%増税のレールを敷いた張本人である。
そして当時、財務省主税局の税制二課長として消費税増税の絵を描いたのが、現在の財務官僚トップの新川浩嗣・事務次官だ。元財務官僚の高橋洋一・嘉悦大学教授が語る。
「石破さんは根っからの財政再建派。野田さんは財務省から“使い勝手佳彦さん”と呼ばれ、かつての3党合意による消費増税を自分の首相としての功績だと考えているから、社会保障改革といわれれば、“与野党にかかわらず必要なことだ”と乗ってくるでしょう。そのための自公との大連携なら反対する理由がない。新川次官はそんな2人の思考パターンをよく知っている。こんな顔触れが与野党のトップに揃った状況を、財務省が増税の千載一遇のチャンスと考えていないはずがない」
増税シナリオは、国民に全くわからない動きからすでに始まっているという。
1月19日のNHK「日曜討論」で石破首相は選択的夫婦別姓について「濃密な議論を早急にやる」と発言、立憲民主の野田代表は「このテーマは30年越しの課題になっている。決着をつける」と応じた。首相は早速、21日の自民党役員会で党の考え方を取りまとめるよう指示し、夫婦別姓賛成派の公明党との協議を決めた。立憲民主も国会に法案を提出する方針だ。