*17:00JST 【NYダウ】2024年の振り返りと25年の見通し~vol.1
以下は、2025年1月29日にYouTubeチャンネル「FISCO TV」で配信された【NYダウ】2024年の振り返りと25年の見通しです。
NYダウ2024年相場の振り返り、2025年の相場見通しを、フィスコ アナリストの白幡玲美が紹介、2回に分けてします。
皆さん、こんにちは。フィスコ アナリストの白幡玲美です。本日は、2024年のNYダウの振り返りと、25年の見通し、大阪取引所のNYダウ先物についてお話させていただきます。
まずは2024年のNYダウの動向について解説させていただきます。2024年の年間パフォーマンスは12.9%の上昇となりました。S&P500は23.3%の上昇、ハイテク株で構成されているナスダック総合指数が28.6%上昇しましたので、米国主要3指数のなかでは上昇率が抑えられた背景としては、2024年非常に注目された半導体大手エヌビディアが、NYダウ構成銘柄に入っていなかったことが大きいと考えます。エヌビディアは昨年11月8日、NYダウに新規採用されましたが、採用されてからはエヌビディアの上値は重くなってしまいました。とはいえ、年間で二けたの上昇率を記録し、史上最高値を更新し、史上初めて40,000ドル台に乗せるなどNYダウが強い動きだったことは事実です。
上昇の背景は4つあったと考えます。
まずは、AI(人工知能)需要拡大期待です。AIが身近な存在となり今後も様々な産業でAI需要の拡大が期待できることから、時価総額が大きいビッグテックを中心に幅広い買いが入りました。日本株にもAI需要拡大期待の波は押し寄せ半導体株が買われました。
そして、FRB(米連邦準備制度理事会)による金融政策正常化(9月から12月にかけて政策金利を3回利下げ)です。FRBは9月以降、政策金利であるFF金利を1.00%引き下げました。2024年初頭の予想よりも利下げ幅は小さくなりましたが、高いインフレが徐々に鈍化したことで、FRBは利下げを行いました。利下げによって有利子負債が多いハイテク株などの支援材料となりました。
三つ目は、米景気のソフトランディング(軟着陸)見通しが強まったことです。金融政策正常化の流れと似ていますが、高いインフレが収束し、安定した雇用が続き、企業業績も好調に推移していることで、ソフトランディングへの期待感が非常に強くなったことも大きく影響しました。
最後は、何と言っても、11月の大統領選挙でトランプ氏が当選したことです。トランプ政権が掲げる政策として、大型減税と規制の緩和があります。「できるのか?」といった懸念はありますが、市場はトランプ政権誕生をポジティブに捉えました。
NYダウ構成銘柄では、アップル、アマゾンといったビッグテックの上昇が目立ちましたが、最も上昇したのは半導体大手のエヌビディアです。2024年に株価2.7倍となり、世界の時価総額ランキングでは、マイクロソフトやアップルを抜き、世界1位となる瞬間もありました。エヌビディアは生成AI向けの半導体を手がけており、AI需要の拡大への期待が株価上昇の背景にあります。エヌビディアの決算発表前は、世界の株式市場で様子見ムードが強まり、決算発表後は多くの投資家が一喜一憂するなど2024年世界で最も影響を与えた銘柄と言えます。
ただ、NYダウに新規採用されたのは11月8日だったことから、エヌビディアが記録した急騰のほとんどをNYダウは享受できていません。仮の話ですが、年初からエヌビディアがNYダウ構成銘柄に組入れられていれば、NYダウの年間パフォーマンスはもう少し上がっていたことでしょう。
一方、NYダウ構成銘柄で弱い動きを見せていたのは、航空機大手ボーイングです。ボーイングは2024年初めには、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による世界的な旅行急減の影響から回復しつつあるように見えました。航空機の受注は増加し、株価は約2年ぶり高値を記録していましたが、1月にアラスカ航空が運航するボーイング機のフライト中にドアプラグが吹き飛ぶ事故が発生したことで様相は一変しました。世論の反発が強まったほか、ボーイングの企業慣行や文化に対する厳しい視線が向けられ、経営陣の刷新でCEOは辞任しました。それでも社内の混乱は収まらず、内部告発や労働者のストライキも勃発し、株価は右肩下がりとなりました。
そして、医療保険業界大手のユナイテッドヘルス・グループは、12月に経営幹部が射殺されるというショッキングな事件が発生しました。医療保険業界に対する不満が犯行の動機と伝わっていますが、過去5年間で株価が2倍となっていたユナイテッドヘルス・グループは、事件発生から2週間ほどで20%ほど株価は急落しました。
それでは、2025年注目の利下げに関するお話に移ります。
2024年12月17-18日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)において、FRBは、トランプ米政権による関税の引き上げと、インフレ率の高止まりに警戒感を強めていることがわかりました。そして、FOMC参加者は、追加利下げの判断には時間をかけることで一致していたことも判明しています。パウエルFRB議長は会合後の記者会見で「ギリギリの判断だった」と認めつつ、今後は「新しい局面に入った」と24年9月から3会合連続で実施した利下げのペースをゆっくりとする考えを示しています。25年の利下げ見通しは2回と見込まれていますので、政策金利の上限は現在の4.5%から4.0%にまで引き下げる予定です。想定通りの利下げシナリオであれば、米国株は程よい温度感での堅調推移となりそうです。2025年は、まさに「適温相場(ゴルディロックス)」通りとなるかもしれません。
それでは、2025年注目の存在であるトランプ政権が掲げる見通し等をご説明いたします。
-【NYダウ】2024年の振り返りと25年の見通し~vol.2に続く-
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