*16:17JST タムロン Research Memo(7):業績目標は売上高950億円、営業利益205億円に上方修正
■タムロン<7740>の今後の見通し
2. 中期経営計画
(1) 中期経営計画「Value Creation26 ver2.0」の概要
同社は2024年12月期からスタートした中期経営計画「Value Creation26」で掲げた経営数値目標を1年目でクリアしたことを踏まえ、今回改めて「Value Creation Ver.2.0」として進化させ、2026年12月期の経営数値目標を上方修正して発表した。
基本方針は変わらず、「着実な既存事業の成長と新規事業創出の加速」「働きがいのある、企業価値の高い企業へ」の2点を掲げ、前中期経営計画での成果に加え新たなチャレンジを通じた質の高い飛躍、企業価値の最大化に取り組み、次期中期経営計画で売上高1,000億円企業に到達するために必要となる経営基盤を構築していく期間と位置付けている。
基本戦略として、事業戦略(事業ポートフォリオ最適化の深化、新規事業の育成・創出の加速)、財務戦略(効率的かつ安定手製を確保した経営の構築、株主還元政策の拡充)、ESG/サステナビリティ戦略(コーポレート・ガバナンス体制の変革、経営インフラ/人的資本拡充、カーボンニュートラル・環境負荷低減)を推進し、持続可能な事業基盤の構築を目指す。
(2) 経営数値目標
2026年12月期の業績目標は当初計画(売上高830億円、営業利益153億円)を1年目でクリアしたことから、新たに売上高950億円、営業利益205億円を設定した。2024年12月期に大きく伸張したことや円高前提でもあり、今後2年間の年平均成長率は3〜4%と堅実な目標である。営業利益率も21.6%と2024年12月期並みの水準を維持する計画だ。EBITDA率で24%以上、ROEで16%以上とそれぞれ当初計画から2ポイント引き上げた。主力のレンズ交換式カメラ市場の動向によって業績も変動する可能性があるが、安定して推移すれは業績目標も十分に達成できる水準と弊社では見ている。
(3) 事業戦略
事業戦略では、各事業へ適正なリソース配分を実施し、継続的な事業成長を目指す。主力事業の写真関連事業では、キャッシュカウ化を進展させ、監視&FA関連事業やモビリティ&ヘルスケア、その他事業の事業規模を拡大し、事業ポートフォリオの安定性を向上させながら成長を目指す。
事業戦略を遂行のため、「生産・調達」「マーケティング・販売」「研究開発・事業企画」といった3つの機能の進化に取り組んでいる。
a) 写真関連事業
写真関連事業は中核事業として高収益体制の向上をテーマに掲げており、2026年12月期に売上高680億円、営業利益200億円を目指す。主要施策として自社ブランド新製品の投入ペース加速とラインナップの拡充を掲げている。従来は年間5機種のペースで発売していたが、2024年以降は6~7機種に引き上げ、2026年は10機種の投入を目指す。新規フォーマットの継続対応として、従来の3マウント体制から4マウント体制※とし、今後ラインナップを拡充する計画だ。
※ 従来は、ソニーEマウント、富士フィルムXマウント、ニコンZマウント用の交換レンズを投入、2024年に新たにキヤノンのRFマウント用が加わった。
自社ブランド品の売上高は、欧米市場での売上挽回や中国・アジア市場の継続拡大、未開拓市場(中南米、アジア、中東、アフリカ等)を開拓することで、2024年12月期実績の360億円から399億円を目指す。OEMについては主要顧客との関係強化を図りながら、売上を維持拡大するが、計画では290億円と横ばい水準を設定。プロダクトミックスの改善により、営業利益率も29%以上と上昇を目指している。
b) 監視&FA関連事業
監視&FA関連事業は成長事業への再転換と、営業利益率10%以上をテーマに掲げ、2026年12月期に売上高130億円、営業利益16億円、営業利益率12%以上を目指す。当初計画と比べて売上目標を15億円引き下げたが、営業利益目標は据え置いた。
主要施策として、監視カメラ市場については高付加価値製品だけでなく中国メーカーなどと競合するボリュームゾーンも強化する方針に転換。一定規模以上の数量を量産することが事業規模拡大だけでなく収益性の向上にもつながると判断したためだ。コスト競争力を高めるため、現状の「日本で開発、生産は中国」から中国内での開発・生産・販売体制を強化する。同社は国内外の大手監視カメラメーカーと取引実績があるため、コスト競争力がつけば、ボリュームゾーンでの取引拡大は可能と見られる。なお、中国の監視カメラメーカー向けについては米国向け輸出で関税やハイテク規制等のリスク要因があるものの、前期の中国向け売上構成比は8%であり同社にとって影響は少ない。むしろ中国の監視カメラメーカーのシェアが低下し、それ以外の地域の先進国カメラメーカーシェアが上昇すれば同社にとって追い風となる。
監視用途の多いカメラモジュールについても高画質、高倍率、小型軽量化などのニーズに対応しながらラインナップを拡充し、OEM及び自社ブランドの両輪で売上を拡大していく。FA分野はラインナップの拡充、OEM受注強化、検査用カメラ等に用いられるSWIR(短波赤外線)※レンズや、ズームレンズで顧客開拓を進める。新規分野としてレーザー加工ヘッドや近赤外照明、業務用カムコーダー市場への参入にも取り組む。
※ SWIRは可視光帯域(400~800nm)より波長が長い光のうち、900~2,500nmの波長帯域の光を指す。目に見えない光線で、物質を透過する。食品製造や農業分野で混入した異物(金属・非金属、プラスチック等)検出用やセキュリティ用途、環境モニタリング用途などで用いられる。
監視やFA分野では、長年の事業展開のなかで築いたグローバルで数百社の豊富な顧客網を有し、都市監視含めたセキュリティ市場の安定成長化、様々な分野での高難度な画像認識ニーズの高まりによって同社のビジネス機会の増加していくもの思われる。
2026年12月期の売上内訳は、監視カメラ用レンズが70億円、FA他が28億円、カメラモジュールが32億円となっており、市場低迷によりTV会議用については計画に織り込んでいない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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