*11:19JST セルシス:デジタル創作ツールのグローバルトップ企業、ストック型収益の拡大と新サービスによる成長加速に期待
セルシス<3663>は、デジタルコンテンツクリエイター向けのソリューション開発・販売を中心として、クリエイターエコノミー市場のコンテンツ制作と流通にかかわるサービスを提供する企業である。2024年12月期の売上高は8,204百万円(前年比1.4%増)、営業利益は2,146百万円(前年比58.7%増)と増収増益で着地、過去最高の売上高および利益となった。同期のセグメント別の売上高構成比は、コンテンツ制作ソリューション事業が87.1%、コンテンツ流通ソリューション事業が12.9%。コンテンツ制作ソリューション事業は、同社の主要プロダクトであるイラスト・アニメ制作アプリCLIP STUDIO PAINTの開発・販売を担う。
CLIP STUDIO PAINTは、日本国内の漫画家使用率95%、アニメ制作現場使用率72%と圧倒的な数値を誇る。11言語に対応するこのアプリは、海外ユーザー比率が約8割、世界最大級のイラストSNSであるPixivでの利用シェアは63%で、累計出荷本数は約5,000万本にのぼる。同社のようにクリエイター向けのイラスト・アニメ制作アプリを開発・販売している企業には、アイビス<9343>やオーストラリアのサベージインターラクティブ社、米国のアドビ社があるが、同社を含め各社がターゲットとする顧客層や利用端末が異なっている。また、複数社のアプリを併用するクリエイターも多く、必ずしも競合としてシェアを奪い合う関係ではないと言える。
アドビ社の調査をもとに同社が推計した世界のデジタルクリエイターの市場規模は、1億3,550万人。一方、CLIP STUDIO PAINTのサブスクリプション利用契約者数は約100万人(2024年12月末時点)であり、市場には十分な成長余地が残っている。この未開拓市場での顧客開拓のために、同社は3つの重点施策に取り組む。ひとつ目の施策は、タイやインドネシア、ブラジルなどの新興国をメインターゲットとした、グローバル展開の強化による新規ユーザーの獲得だ。2つ目の施策は、若年層・ライトユーザーの取り込むためのモバイル環境での競争力強化。そして、3つ目の施策は、ユーザーコミュニティサービスの活性化による継続利用率の向上となっている。
同社は、2027年12月期を最終年度とする中期経営計画(中計)を公表、最終年度の計画数値として売上高107億円、営業利益33億円、ROE33%を掲げた。中計における事業面での重要な施策のひとつは、サブスクリプション契約の増加である。サブスクリプション契約は、買い切り版の販売に比べ短期的な収益性は低くなる。しかし、新規ユーザーにとっては利用開始の敷居が下がるとともに、継続利用によるストック型の収益源となることが見込まれる。中長期的な事業成長を支えるために欠かせない、重要なイニシアティブと言えよう。2022年12月期には35%だったサブスクリプション契約の売上構成比(2023年に事業譲渡したUI/UX事業除く)は、2024年12月期には47%へと上昇、2027年12月期にはこれを69%まで引き上げることを目指す。重要KPIとしているARR(サブスクリプション契約から1年間で得られる収益)は、2024年12月期末の43億円から2027年12月期には77億円と、3年間で約80%の成長を見込んでいる。
今期、同社は事業再編を実施、CLIP STUDIO PAINTを中心としたアプリやサービス展開をする「クリエイターサポート分野」とクリエイターエコノミー市場での新サービスを創出する「クリエイタープラットフォーム分野」の2分野体制とした。このクリエイタープラットフォーム分野における、新サービスの開発・提供が、中計におけるもうひとつの事業面での柱だ。現在グローバル総収入が18兆円とされるクリエイターエコノミー市場は、2029年には46兆円まで成長すると推計されている。同社は既存事業で培った世界中のクリエイターからの信頼と流通ソリューション資産を活用し、この巨大市場での新サービスを開発・提供、創作活動の活性化と事業の拡大を図る。潤沢な現預金と保有する自社株を活用したM&Aやアライアンスによる組織強化・開発の促進も視野に入れ、2026年12月期には新サービスを正式リリースする計画である。
2015年12月期以降、9年連続で増配を継続しており、同社は株主還元にも積極的だ。2025年12月期も普通配当の増配に加え、上場記念配当の実施も予定している。主力のCLIP STUDIO PAINTは、世界的なユーザー基盤と高いブランド力を背景に、今後も安定した成長が見込まれる。加えて、グローバル市場や新サービス領域における積極的な投資は、中長期的な売上の複線化を進めるうえで極めて重要な布石だ。収益性の高いサブスクリプションモデルへの移行も順調に進んでおり、ARRを中心とした成長指標の伸長が株価の新たなドライバーとなる可能性は高い。拡大するクリエイターエコノミー市場を取り込む次の成長局面において、有望なポジションにいる同社の展開には注目しておきたい。
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