米朝開戦前夜の様相を呈すなかで、日経平均株価の下落が続いている。地政学リスクを勘案すれば、当然のことだろう。一方で、市場関係者の間では「有事によって経済が上向く可能性」が囁かれている。
「戦争が景気を活性化させる」という経済理論は、必ずしも常に正しいわけではない。現にベトナム戦争やイラク戦争では深刻な戦後不況が米国で起き、世界にも波及した。また、地上戦中心ではなくなった現代の戦争は、20世紀のような“大量消費型”ではなくなった。戦争を起こして景気を回復させるという考え方自体も現代の国際社会では容認されない。
一方で、「戦争と景気」が分け難く結びついてきた歴史があることも事実だ。とりわけ日本の戦後復興に大きな影響を与えたのが、まさしく朝鮮半島が舞台になった戦争に絡んだ1950年の「朝鮮特需」だろう。同年6月に勃発した朝鮮戦争を受けた特需である。
「当時、日本は米軍を主力とする国連軍の出動基地となり、兵器やその材料となる鉄鋼や軍用物資などの買い付けで、重厚長大型の産業などが大いに潤い、日本経済が戦後の混乱期を脱するきっかけになりました」(第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミストの永濱利廣氏)