60歳前後でのマネーライフの変化は多岐にわたる。その中でも最も大きな動きが退職金だ。大卒サラリーマン(総合職)の平均額は2358万7000円、高卒サラリーマンの平均額は2154万9000円(経団連と東京経営者会の共同調査より。2015年発表)。会社員にとって人生最大のまとまった収入である。
当然、金融機関にしてみれば「ぜひ私のところに!」と攻勢をかける“宝の山”となるが、預ける側はどんな規準で選べばいいのだろうか。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢氏はこう提案する。
「退職金を老後の生活資金に充てる前提に立つなら、リスク投資を避け、かつ当面は取り崩さずにキープすると考える人が多いはずです。その場合、元本保証のある定期預金が有力な候補となりますが、金融機関によって預金金利に大きな差がある。特に信用金庫や信用組合では年金の振込口座に指定すると金利を上乗せするサービスを実施しているところが多いので検討してみる価値があります」
退職金や年金の運用を謳う定期預金商品を見ると、稚内信用金庫(北海道稚内市)の「年金アップ定期100」(1.015%)や、コザ信用金庫(沖縄県沖縄市)の「退職金専用定期預金 ニューラライフ」(1.000%)、城南信用金庫(東京都品川区)の「節電プレミアム預金」(1.000%)、南日本銀行(鹿児島県鹿児島市)の「なんぎん退職金プラン一期一得定期預金」(1.000%)など、高金利のものも存在する。普通預金の金利が軒並み0.001%と事実上の「ゼロ金利」状態の中では魅力的だが、風呂内氏が指摘するように、信用金庫や信用組合の商品が目立つ。
メガバンクでも年利1%に相当する三菱東京UFJ銀行の「スーパー定期 基本プラン」など高利率の定期が存在する。ただしこれらは元本割れリスクを伴う投資信託購入とセットでの加入が条件となる。全国的には知名度の低い信金、信組が高利率の定期預金商品を出している理由について、元三井住友銀行中野支店長で『京都かけだし信金マンの事件簿』の著書がある菅井敏之氏が解説する。