マイナス金利の影響で生命保険各社が保険料の計算の基となる予定利率を引き下げ、保険料が大幅に値上がりした商品もある。果たして生命保険に加入するメリットはあるのか。
予定利率は契約者と約束する運用利回り
この4月、多くの生命保険会社が保険料を値上げした。その理由はマイナス金利による運用環境の悪化だ。生命保険の保険料は予定死亡率や予定利率などによって計算されている(下記保険料の改訂例はクリックすると拡大)。
予定死亡率とは、契約者が亡くなる確率。予定死亡率が高くなれば、保険金を支払う可能性が増えるので保険料は上がる。一方で予定利率は、契約者から預かった保険料をどのくらいの利率で運用できるか、契約者に約束する運用利回りのこと。市場金利が低くなると、予定利率も下げざるを得ない。
また、加入時の予定利率が基本的に満期まで続くので、高い予定利率を設定すると、市場金利が低下したときに保険会社がリスクを抱えることになる。
実際、生命保険会社には苦い経験がある。「お宝保険」と呼ばれる契約の存在だ。
1990年代前半には、予定利率が5%を超えていた時期があった。その後は、バブル崩壊ととともに市場金利が低下し、合わせて予定利率も徐々に引き下げされていった。
しかし、5%の時期に契約されたものは、満期や保険金の支払いで契約が終了するか、中途解約されるまで予定利率を保証しなければならない。
このため、実際の運用利回りが予定利率を下回ってしまう、いわゆる逆ザヤの状態に陥り、長く生命保険会社の経営を圧迫してきた。一時は逆ザヤがひとつのきっかけとなり、生命保険会社が次々と破たんしたほどだ。
現在は多くの生命保険会社で逆ザヤが解消されているが、轍を踏まないためにも予定利率には慎重にならざるを得ない状況がある。
今回の保険料の値上げも予定利率の引き下げが理由だが、これにより、いわゆる“元本割れ”が続出している。この場合の元本割れとは、トータルで支払う保険料よりも最終的に受け取る保険金の方が少なくなってしまう現象をいう。