外資系証券会社で莫大な利益を上げた伝説のトレーダーの世界ウォッチング。かつて米証券会社ソロモン・ブラザーズの高収益部門の一員として活躍した赤城盾氏が、日米の株価指数のパフォーマンス格差がどこから生じているのか、考察する。
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アメリカの株価は、昨年11月の大統領選挙の直後から急騰した。それは、ドナルド・トランプ新大統領が公約に掲げていた金融規制緩和、大幅減税、インフラ投資などの政策に対する期待の表われのようにも見え、トランプラリーと称された。
しかし、1月20日に発足したトランプ政権は、やっと5月4日になってオバマケアを縮小する法案が下院を通過するまで、公約実現に向けてほとんど何の成果も上げられなかった。
大統領の支持率は、ご祝儀気分に包まれるはずの就任直後としては異例の低水準をさまよっている。その間に、株価は下落するどころか、ナスダック指数が2000年のネットバブル以来の史上最高値を更新するラリーが続いたのである。
これは、いわゆるトランプラリーなるものが、単に良好な経済環境と好調な企業業績の賜物であったことを示すものといってよかろう。
ヒラリー・クリントンが当選していても、セクター選好や多少のタイミングの違いはあっても、株価は同じ程度上昇したのではなかろうか。
トランプは、大手メディアや官僚や古手の政治家などから成るワシントンに巣食う既得権益層の一掃を訴えた。かつて、我が国の民主党が、財務省が隠す埋蔵金を掘り出せば、増税も福祉の切り捨てもなしに財政を再建できると主張していたことを思い起こさせる。
両者ともに、エスタブリッシュメントを激しく攻撃して、大衆の支持を得ることに成功した。しかし、政権を取った後は、中央政府の膨大な業務の運営は、官僚機構に任せざるを得ない。日本の民主党政権は露骨な対決姿勢が災いして、その協力を得られなかった。トランプ政権に至っては、主要なポストがなかなか埋まらず、政府は機能不全の状態にある。