いま、年金の受給開始年齢を「75歳」にしようとする計画が進められている。政府は74歳までを“働ける世代”と見なそうとしている。だからこそ昨今「75歳まで働ける社会を」「高齢者は75歳から」などの言説が飛び交っているのだ。しかし、定年後に再雇用で働いても現役時代の給料が保障されるわけではない。
厚労省の調査では定年後も年金受給が始まる直前の64歳までフルタイムで働くサラリーマンは62%にのぼるが、60歳以降の給料は定年前の「40~50%」にダウンしたという層が最も多い。
国税庁の「民間給与実態統計調査」(2015年)でもそれが裏付けられる。男性の年収のピークは50歳代前半の約656万円だが、60代前半は約477万円、60代後半になると約389万円、70代以上は約359万円とピーク年齢時の半分近くまで下がる。これは経営者も含めたフルタイムの就業者の金額だ。
定年後に同じ会社に期限付きの嘱託社員として再雇用された運送会社の運転手3人が「仕事内容は同じなのに給料を3割下げられたのは不当」と訴えた裁判では、一審は勝訴したものの、二審の東京高裁は昨年11月、「同じ労働条件であっても、定年後の賃金減額は社会一般で広く行なわれており、そのことは社会的に容認されている」と会社側の減給を認めて一審判決を取り消した(原告は上告中)。