好調が続く米国経済。2015年半ばにもFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げが予想され、先進国各国が金融緩和を続けるなかで、いち早く金融引締めに転じようとしている。はたして2015年の米国経済はどうなるのか、元ドイツ証券副会長の武者陵司氏(武者リサーチ代表)が解説する。
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大前提として、2015年の世界経済は先進国が牽引して好調に推移すると見ている。10月に発表されたIMF(国際通貨基金)の世界経済見通しによると、2014年の世界経済の成長率は3.3%(米国2.2%、ユーロ圏0.8%、日本0.9%、新興国4.4%)、2015年は、世界経済3.8%(米国3.1%、ユーロ圏1.3%、日本0.8%、新興国5.0%)となっている。好調な米国経済が順調に拡大を続け、世界経済を牽引する構図だ。
米国経済が2015年も力強い成長を続けると予想される理由は、大きく3点ある。
1つめは、米国にはペントアップ・ディマンド=積み残した需要が残っていることである。今回の景気回復局面では、企業の設備投資や民間の住宅投資は、まだまだ需要不足が残っていて、積み上げる余地がある。
2つめは、企業から家計への所得配分が本格化すること。米国の労働分配率は、景気拡大期がすでに4年間続いているにもかかわらず、生産性の上昇などにより、過去最低水準にとどまっている。それが、失業率の低下など雇用環境の好転で、ようやく給与・賃金が増えていくのではないか。そうなれば、消費という強力なエンジンが加わり、経済成長が加速する。
3つめは、クレジットサイクル(信用循環)が、これから拡大局面に入ることだ。クレジットサイクルは、長期的な経済変動を規定する条件だが、2011年に底入れした後は弱含みとなっている。企業債務の対GDP(国内総生産)比率も上昇せず、家計債務の可処分所得に対する比率は低下中だ。まだ回復のごく初期の段階で、信用不安やバブルの恐れはない。
以上のことから、利上げが実施されても、米国景気が腰折れするようなことは、まずないと言っていいだろう。
※マネーポスト2015年新春号