今秋から始まる税制改正の論議では公的年金等控除を見直しに動くことが報じられた。年金受給者は最低でも年間120万円(65歳以上の場合)の所得控除を受けられる。そのぶん、同じ額を給料として受け取るよりも、税負担は少なく済む。だが、この公的年金等控除が縮小・廃止されると、高齢者には所得税・住民税の大増税になる。
そして、この10月から始まる一つの新制度がある。年金の受給資格期間が短縮され、これまでは25年以上保険料を支払わなければ年金をもらえなかったが、10年間支払えばもらえるようになった。この改正で無年金だった64万人に支給が始まる。
「無年金救済法」(改正年金機能強化法)の施行だ。
64万人は年金保険料を納めながら年金をもらえなかった“払い損”だった人たちであり、保険料を“ただ取り”していた国が救済するのは当然だろう。
年金支給に必要な財源は年間わずか650億円程度で、働く高齢者の年金停止で国が巻き上げている“埋蔵金”を使えばとっくに払えたはずだが、議論がスタートしてから実現するまで10年以上かかった。財務省が「消費税10%への引き上げと同時でなければ財源がない」と埋蔵金を出し惜しんだからだ。