香港上場の大手通信機器メーカーである中興通訊(00763)の株価が大きく上昇している。2016年5月24日の場中で9.224香港ドル(修正株価)の安値を付けた後、値固めに入り、下値を切り上げていったものの、2017年3月10日の終値は12.42香港ドルに過ぎなかった。この時点では安値からまだ、34.6%高い水準に留まっていた。しかし、その後株価は加速度的に上昇し、2017年10月9日終値は29.45香港ドルまで上昇している。大底からは1年4か月強で219.3%上昇、半年弱では137.1%上昇している。
業績をみると、2016年12月期は1.0%増収、23億5700万元の赤字であった。アメリカ製の通信機器をイラン、北朝鮮に輸出したことに対する罰金支払いで赤字転落となったものの、2017年6月中間期は13.1%増収、29.8%増益を達成。4G関連投資に対する旺盛な需要を取り込んだこと、海外の携帯事業を積極的に拡大させたことが好業績につながった。
株価の急上昇について、業績回復が要因の一つとみられるが、それ以上に、5G(第5世代移動通信システム)開発の加速や、それに伴うAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)産業の急成長見通しによるところが大きいと考えている。従来の4G・LTEと比べて通信スピードが圧倒的に高速化することで、社会全体の大きな変化が予想されているのだ。
9月27日から30日にかけて北京市で行われた2017年中国国際情報通信展覧会では、5G開発が順調に進んでいることが明らかになった。この展覧会において工信部通信発展司の聞庫司長は、「中国の5G技術実験は既に第2段階に進んでおり、その中心内容となる仮想実験は基本的に終了している。現在、5G推進グループは北京懐柔区において、30か所の基地局からなる屋外実験設備を建設中であり、間もなく、実験は第3段階に移るだろう。この段階では、国際標準規格を遵守し、商用のハードウエア・プラットフォームを用いて、商用設備のネットワーク性能テスト、互換テストなどが行われる。これにより、要求される設備、チップなどの性能目標が明らかになる」などと説明している。