父の急死で母の介護が始まり、それまで自分の人生の収支しか考えていなかったのに、突然、親の人生の家計簿も背負うことになった女性N記者。否応なしに首を突っ込まざるを得なくなった両親のお金問題と介護についてレポートする。
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2012年の年末に心筋梗塞で倒れた父は、救急搬送されて2日目に永眠した。
臨終のときは、母、夫、娘、私の4人で父を囲んで手を握り、静かに送ることができた。急なことで、どこか夢を見ているようでもあったが、まじめで穏やかな父らしい“いい最期”だと思えた。
「午後1時26分、ご臨終です」。医師が父の人生の終結を宣言すると同時に、私は何かが始まる感じを覚えていた。
隣で呆然自失している母を支えるのはひとりっ子の私だけ。すぐに始まる葬儀、膨大な作業と聞く相続、母の生活支援。昔から覚悟はしていたが、準備などしていない。突然スターターピストルが鳴って、仕方なくヨロヨロと走り出した感じだった。
「とりあえずお義母さんの通帳や印鑑、大事なものをウチへ移そう」と、夫が冷静でいてくれたことは本当に助かった。母は当面わが家に滞在させることにしたが、葬儀の諸費用などとても立て替えられないし、相続手続きも待っている。元からお金の計算や管理が苦手な私には、親のお金問題に介入するというのはあまりに気が重かったが、「もう逃げられないよ」と、夫が背中を小突いたのだ。