3年前の消費税増税ショックはまだ記憶に新しい。「景気に影響はない」と経済学者たちは口を合わせて楽観的な見通しを語っていたが、税率が5%から8%に引き上げられた途端(2014年4月)、消費がドンと落ち込み、アベノミクスで上向いていた日本の景気は急激に冷え込んだ。一番影響を受けたのは年金生活の高齢者たちだった。
2019年10月、消費税率が10%に引き上げられ、あの悪夢がまたやってくる。
増税の高齢者世帯への影響は数字に表われるより深刻だ。みずほ総合研究所の試算では、消費税率が10%になれば、夫婦の年金合計額が年間約250万円(月額約21万円)の世帯のケースは年間約3万8000円(月額約3200円)の増税となる。
年金生活のAさん(74)は毎月1回、足が弱くなった妻に付き添って離れた病院までタクシーで通院している。往復5000円近い出費は今でもきつい。
「増税されれば月3000円ほど可処分所得が減るから、正直、タクシー代が足りなくなる。片道だけバスを使うことも考えているが、足が弱い妻をバス停まで歩かせるのは忍びない。食費を削るか、通院を2か月に1回に減らすかいまから悩んでいます」(Aさん)