好調日本株の背景として、日銀による異次元の金融緩和が挙げられるが、それだけではない。今後の株式市場を見通すうえでのポイントとなるのが円安と原油価格である。長期的な日米の金利差拡大に伴う円安ドル高基調が日本株にとって追い風となるのは間違いない。では、原油価格は日本株にどう影響するのか。グローバルリンクアドバイザーズ代表・戸松信博氏が解説する。
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今後の為替や株式市場を見通すうえでまずカギを握るのが、「原油価格」である。1バレル当たり50ドルを切るような展開が続き、ここにきて反発を予想する声も多いが、そもそも今回の原油安は、新興国の景気悪化に伴う需要減やシェール革命に伴う供給増といった需給ギャップの開きだけでは説明できない水準にある。
その背景にあるのは、ロシアのプーチン大統領と米国を中心とする国際金融資本の対立がある。そのような政治的要因が大きく横たわっている以上、プーチン氏が失脚してロシアが再び民営化路線に戻るような大きな変革が起きなければ、急激な反発は期待できないだろう。
この原油安は当の米国企業にも跳ね返っている。今年1~3月期の米企業全体の業績は、エクソンモービルをはじめエネルギー企業の大幅な減益が相次ぎ、リーマン・ショック直後の2009年以来となるマイナス成長に陥る見込みだ。
一方で、原油安は資源を輸入に頼る日本企業にとって生産コストや運輸コストの低減につながり、プラスに働く。加えて円安は輸出企業のウェイトが高い日本株にプラスとなるため、「円安+原油安」が追い風となるのは必至の情勢といえる。
ただし、あまりにも原油安が長引き、米国企業の腰折れ懸念が高まるようだと、FRB(米連邦準備制度理事会)も出口戦略を後退せざるを得なくなり、ドル安円高、さらには原油高への巻き戻しも起こりかねず、一方的なドル高、原油安には歯止めがかけられている。そうなると、現在の日本の株高基調も変調をきたす恐れがあるので、リスク要因として注意を払っておく必要があるだろう。
それらの要因を併せて考えると、米利上げのタイミング次第だが、為替が1ドル=130円になれば、日経平均株価も年内に2万4000円を視野に入れた展開が予想される。
※マネーポスト2015年夏号