2012年末にスタートしたアベノミクス相場で、日本株はそれまでの水準から大きくジャンプアップしたが、そもそもどうして上昇したのか。かつて米証券会社ソロモン・ブラザーズの高収益部門の一員として活躍し、巨額の報酬を得た後に退社した赤城盾氏が解説する。
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思えば、昨年末は、円が対ドルで大きく下落していた。アベノミクス相場とは、要するに日米の金融政策の方向性の違いが金利差を拡大させるであろうという円安相場に過ぎなかった。
円安が止まれば、長期的には人口が減少し、短期的にはさらなる消費増税が待ち構える日本という地域には、世界の投機資金を集める魅力は乏しい。
もちろん、日本という地域に投資することと日本企業の株式に投資することは、同義ではない。日本経済が長期的に縮小していく中でも、海外市場を開拓して利益を伸ばし続ける日本企業はいくらでも存在しよう。
しかし、中国に抜かれたとはいえ日本は未だ世界第3位の経済大国であり、その国内市場は巨大である。日本企業の大半は、大なり小なりそこに収益の基盤を置く。だから、日本の株式市場全体は、日本経済の行く末に関する思惑に連動することは避けられない。
そもそも、自国以外の企業に投資しようと思ったら、先ずは経済成長が加速しそうな地域を探すのが普通のアプローチであろう。それが、日本株の動向を決めている外国人投資家の視点なのである。
本当に日本経済の成長を加速させたいのであれば、何をおいても、労働人口の減少と国内消費の縮小に歯止めを掛けるために、大規模な移民の受け入れが必須のはずである。たとえ奇跡が起きて出生率が直ちに急上昇しても、経済成長の足しになるまで20年はかかるのだから。
安倍政権の発足当初の熱狂的な外国人買いは、あるいは、そこまで踏み込んだ成長戦略に対する期待を含んでいたのかもしれない。しかし、安倍首相が「成長戦略の一丁目一番地」と意気込んだ薬のネット販売の解禁では、一部の企業の利益は増えこそすれ日本経済全体の成長にはつながらない。
※マネーポスト2014年秋号