列島が大寒波に襲われた2月初旬のある昼下がり、1台のドローンがコンビニの前に姿を現した。
機体は直径約1m、白と赤のフレームに黒いプロペラが6枚付いている。機体の下部に肉まんや総菜、弁当を詰めた箱がセットされると、スタッフの合図とともにプロペラが高速で回り始め、大きな音を立ててゆっくりと上昇、視界から消えていった。
福島県南相馬市にある「ローソン南相馬小高店」。東京電力の福島第一原発から30km圏内にあり、東日本大震災後に一時避難指示区域に指定された。指定が解除された今も震災の爪痕が残り、修復中の家屋や閉店したままの店も多い。
足腰の弱いお年寄りにとっては、歩いて遠くまで買い物に行くのは一苦労だ。そうした人たちを手助けするため、ローソンは昨年10月、楽天とタッグを組んでドローン配達の試験運用を開始した。この街で個人タクシーを営む運転手がこう話す。
「徐々に人は戻ってきているが、まだまだお店が少ないね。コンビニを利用したくても集落からは丘を登って2kmほど歩かなければならず、みんな不便しています。ドローン配達でみんなが救われますわ」
このサービスは、電話で注文を受けたローソンのスタッフが商品を箱に詰めた後、楽天スタッフが箱をドローンにセット。専用端末から出発指示を出すと指定の着陸地点までドローンが配送してくれる。