この国の政治家と税務当局の徴税思想は戦後一貫して「取りやすいところ、がっぽり取れるところから徴収する」というものだ。
人口のボリュームゾーンが現役世代だった高度成長期はサラリーマンから所得税を取り立てた。団塊世代の年金受給が始まると、年金受給者の課税最低ラインを大幅に引き下げて低所得の高齢者からも税金を取り立てる仕組みを整えた。団塊世代に支払う年金を「広く浅く」回収していくためだ。
今、狙われているのが「働く高齢者」である。
安倍政権が「働き方改革」で高齢者が75歳まで働くことができる社会づくりを掲げると、「高額な年金をもらう人に今と同じ控除をする必要があるのか」──宮沢洋一・自民党税調会長はそうぶち上げ、政府与党は国会で審議中の税制改正法案に年金以外に一定以上の収入がある「働く高齢者」の年金控除を引き下げる増税を盛り込んだ。
一見、金持ち増税に思えるが、狙いはそこではない。
年金をもらいながら働いて給料を得ているダブルインカムの高齢者からは「税金を搾り取りやすい」と見て新たなターゲットに定めたのだ。財務省はかねてから税制上、給与所得控除と公的年金等控除という2つの負担軽減措置を受ける現在の税制を「控除の二重取り」と批判しており、段階的に減らしていきたい考えだ。
だが、働く高齢者の「在職老齢年金」にはすでに給料が増えると年金受給額を減額される仕組みがある。そのうえ年金の控除まで引き下げられれば、高齢者にすれば働いて稼げば稼ぐほど年金が減らされ、税金が急カーブで増えていく。まさに働く高齢者を“生かさぬよう、殺さぬよう”に税金を貢がせようという意図が透けて見える。
今年はその新たな高齢者増税元年とも言える。
※週刊ポスト2018年3月9日号