大手メーカー勤務のAさん(59歳)は定年を前に大きな選択を迫られている。今の会社に再雇用され、65歳まで働くことはできるが、長い付き合いの取引先の社長から「わが社の顧問にならないか」と誘われたからだ。
Aさんは3年前の役職定年で降格し、元部下が上司となった。その頃から、やりにくさを感じていたという。
「いわゆる窓際扱いです。仕事にはさほど不満はないが、上司とはしっくりいっていなかったから、疎外感を感じていました。今では転職もいいかなと思い始めています」
厚生年金に入れない
転職(再就職)を持ちかけてくれた取引先の社長は「在籍中の会社で再雇用される場合と同じ給料を払う」と約束してくれた。だが、顧問は非正規雇用になるため、社会保険はつかず国民健康保険(国保)に加入することになる。また、転職先が非正規雇用であれば、厚生年金に継続して加入するのは難しく、将来もらえる年金額に影響する。
我慢しながら今の会社に残るか、新天地に「再就職」すべきか。その決断は、その後の「収入」を大きく左右するのだ。
再雇用であっても現在の会社で正社員として65歳まで働けば、非正規に転職するより厚生年金の加入期間が5年間長くなり、それだけ受給額が増える。その差は大きい。