企業などが、IPO(イニシャル・パブリック・オファリング=新規株式公開)の代わりに独自の仮想通貨を発行して資金を調達するICO(イニシャル・コイン・オファリング)が国内外で急増している。それを受けて、世界各国の金融当局はICOの規制強化に動き出している。ICOにはどんな課題があるのか。なぜ規制が必要なのか。フィスコデジタルアセットグループ代表取締役でビットコインアナリストの田代昌之氏が解説する。
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ICOとは、一般的に、企業などが「トークン」と呼ばれる独自の仮想通貨を発行して、投資家から資金調達を行なう行為の総称だ。端的にいえば、トークンを投資家が購入することで、発行する企業は資金調達ができ、投資家は購入したトークンの価値が上昇すればキャピタルゲインを得られるという仕組みである。
国境に関係なく、インターネット上で機動的かつ簡単に資金を集められるため、ICOは件数も調達資金額も国内外で急激に増えている。
だが、ICOはIPOのように事業内容や将来の業績見通しに関する審査を受けていないので、投資家が資金調達に応じるかどうかの判断材料は、発行主体が調達した資金の使い道(事業計画)やトークンの販売方法などをまとめて、ネット上に掲げたホワイトペーパー(株式では目論見書に該当)だけとなる。そのため、事業計画が計画倒れに終わってしまって投資家が損害を受けるケースも少なくない。
さらには、詐欺が疑われる事例が多いのも実情のようだ。実際に海外では、資金を調達した後に連絡が取れなくなったり、調達資金を持ち逃げしたりするケースも報告されるなど、大きな課題も抱えており、各国の金融当局が警戒を強めているのが現状だ。