2月13日、日本年金機構のホームページに、〈平成30年2月の老齢年金定時支払における源泉徴収税額について〉と題された文書が、ひっそりとアップされた。この時点で機構からの報道発表はなく、問題として報じたメディアはなかった。だが、3月に入ってからこの文書の意味するところが、「約130万人の年金が不当に削られていた」という重大事案であることが判明する。
問題の発端は、毎年8月末~9月上旬にかけて機構から年金受給者に送られてくる「扶養親族等申告書」だった。この申告書に配偶者など扶養親族の所得情報を書き込んで返送すると、年金から源泉徴収される所得税の控除が受けられる。
3月初旬の第一報の時点では、“申告書の書き方を間違える受給者がたくさんいたので、2月分の年金で130万人に過少支給が発生した”という話になっていた。
これまで、申告書は往復はがきの形式で、多くの人は「変更なし」にチェックを入れて返送すればよかった。それが、昨年・2017年はマイナンバー導入や配偶者控除の改定を受けて記入項目が大幅に増え、様式もA3用紙に変わるなどしたため、〈(受給者が)申告書と気づかず手続きをしなかったり、記入をミスしたりするケースが続出した〉(朝日新聞、3月3日付)と報じられていた。
ところが、である。3月20日になって、機構は会見を開く。そこで、申告書のデータ入力を委託した情報処理会社「SAY企画」が入力ミスを重ねたため、申告書を適切に提出したにもかかわらず、その内容が正しく2月の支給額に反映されなかった人がいると明らかにしたのだ。同社は作業人員が足りなく、本来契約違反である「再委託」を中国の業者に依頼していた。
入力ミスなどによって年金を減らされていたのは約10万4000人。1人が削られた額は1万~5万円程度で、その総額は約20億円に及んだ。
年金受給者の記入ミスだとしきりに強調されていたにもかかわらず、機構側の杜撰な作業で「消された」年金があったのである。
※週刊ポスト2018年4月13日号