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身近な事象と経済の関連性 『笑点』視聴率は景気と反相関?

私たちの生活において身近な事象と経済には、どんな関連性があるのか。内閣府の「景気ウォッチャー調査研究会」委員など主要な景気調査の委員を歴任し「景気のジンクス」を読み解くスペシャリストとして知られる、三井住友アセットマネジメント理事・チーフエコノミストの宅森昭吉氏が解説する。

『笑点』の視聴率と景気の関係は?(同HPより)

『笑点』の視聴率と景気の関係は?(同HPより)

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景気や株価を予測するうえで参考になるのは、経済指標や金融政策ばかりではない。スポーツの結果やテレビ番組の視聴率といった身近な事柄も密接に関連している。

たとえば、注目度の高いスポーツの結果と株価はたびたび不思議な連動を見せる。この秋、ラグビーワールドカップで日本代表が、過去2度の優勝を誇る強豪南アフリカ代表を下した。ラグビーは番狂わせが起こりにくいスポーツだけに日本のみならず海外メディアも大金星として大きく報じた。

注目の次戦、対スコットランド戦は地上波で14.6%もの視聴率を集めたが、結果は敗戦。期待されただけに落胆も大きく、翌日の日経平均株価は498円も下落してしまった。それでも、次のサモア戦で勝利すると翌営業日の日経平均は持ち直し280円上昇した。

最終戦のアメリカ戦は勝利したものの、一次リーグ敗退がすでに決まっていたため注目度は低く、翌営業日の株価は203円安に沈んだ。もし、ポジティブサプライズとなった南アフリカ戦の翌日が平日なら、株価はかなり上昇したと予想されるが、残念ながらシルバーウィークの最中だった。

こうしたデータに対し、単なるこじつけだと断じるのはたやすい。しかし、18年前の1997年、サッカー日本代表が初のワールドカップ出場を決めた試合の翌日、日経平均株価は1200円も上昇した。この日は北海道拓殖銀行の経営破綻が発表され大暴落してもおかしくなかったが、これほどの上昇を記録した理由は「ジョホールバルの歓喜」によって人々のマインドが好転したためとしか考えられないのだ。

身近な事象が経済と密接に関連していることを表わす例はまだ多くある。たとえば、「節約食材」でもあるもやしは、景気が悪化すると売り上げが増える傾向にあり、企業倒産による負債総額のデータとほぼ連動している。

また、人気テレビ番組『笑点』(日本テレビ系)は、景気が悪くなると視聴率が「その他娯楽」カテゴリでトップとなる傾向にある。「暗い気分を笑いで吹き飛ばしたい」という人々の心をつかみ、日曜に外出せず家でテレビを見る人が増えることを示すのではないか。

こうした景気の「ジンクス」は、偶然とはいえない確率で景気動向や株価と一致する。経済活動の主体は市井の人々であり、景気を動かしているのは彼らのマインドにほかならないからだ。

【PROFILE】たくもり・あきよし:さくら証券、さくら投信投資顧問のチーフエコノミストを経て現職。ESP景気フォーキャスト調査委員会(日本経済研究センター)委員、景気ウォッチャー調査研究会(内閣府)委員。著書に『ジンクスで読む日本経済』など。

※マネーポスト2016年新春号

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