無償でスポンサーとなり、金銭的な援助をしてくれる“タニマチ”と呼ばれる人たち。相撲取りや歌舞伎役者の話題などで聞かれることも多いが、中には売れない若手芸人にもごくまれに存在するという。
短期間ながらタニマチがいたことがあると話すのは、都内でライブを中心に活動する若手芸人のAさん(30代男性)。Aさんはタニマチに出会った日のことについて、こう振り返る。
「その日は知り合いが店長をつとめる居酒屋でネタをやってほしいと頼まれ、軽い気持ちで引き受けました。ギャラは交通費のみでしたが、経験も積みたかったのでいいかなと。その店に偶然いたのが、その後タニマチとして僕らを助けてくれたおじさんでした」(Aさん、「」以下同)
ネタ終了後には、その男性はAさんのコンビを隣の席に座らせ、酒を振る舞い上機嫌だったという。
「実はネタの意味はまったく分からなかったそうです。でもとにかく楽しそうにネタをするのと、僕らが客イジリをした際に見せたらしい“人懐っこさ”が好印象だったと話してくれました。その後もしばらく『物好きなおじさんだな』と思いながら一緒に飲んでいると、突然店長が僕らを呼び、そのおじさんが何者なのかを教えてくれたんです。某有名企業の元会長で、現在は悠々自適な隠居生活を送っているという人でした」
帰り際には「交通費」といい、Aさんのポケットにお金をねじ込んできたという。「5万円も入っていました。相方と合わせると10万円です。居酒屋から僕の家なんて電車で往復400円の距離だったので、かなり驚きました」