1990年代に9兆円を超えていた売り上げも、6兆円まで減少した百貨店業界。1999年には311店舗あった店舗数は、2000年代に入って以降、閉店が相次ぎ、全国に206店舗まで数を減らした。
幼稚園の頃からデパートに通い詰め、全国約250の店舗に足を運んできた『胸騒ぎのデパート』(東京書籍)の著者で放送作家の寺坂直毅さんは、“今のデパートはかつてのデパートらしさを失っている”と語る。そんな寺坂さんが、足を運んでしまうという地方の百貨店について語る。
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小学生の頃から、友達と野球やサッカーをするよりもデパートに通うのが何よりも楽しみでした。エレベーターガールのお姉さんに顔を覚えてもらって、行くたびに挨拶をしてくれたり、誰もいないエレベーターで飴をもらったり。
そういう家族的な、ホッとできる安心感と、家電も本も洋服もおもちゃもなんでも買える便利さ、屋上で遊ぶ楽しさ、食堂で食べるお子様ランチやハンバーグ、という魅力が詰まった場所でした。同時に、美術館や劇場もあって文化を発信する場所でもあった。
娯楽が充実している東京と違って、地方ではいまだに昔ながらの古き良きデパート文化が残っていると思います。あえて今の時代に屋上で遊べるようにしたり、ファミリー大食堂を復活させようとしたり、ご当地色を打ち出しつつデパ地下の活性化を図ったり。
ネットでなんでも“モノ”を買える時代に、その空間でしか得られない“コト”をどう提供するか。生き残りをかけて一生懸命努力されている。だから最近は地方のデパートにばかり行ってしまうんです。
※女性セブン2018年6月7日号